株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

急性膀胱炎[私の治療]

No.5104 (2022年02月19日発行) P.44

山本新吾 (兵庫医科大学泌尿器科学講座教授)

登録日: 2022-02-21

最終更新日: 2022-02-15

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 急性単純性膀胱炎は,大腸菌をはじめとする直腸常在菌による上行性尿路感染である。急性単純性膀胱炎に罹患する患者の多くは性的活動期女性である。閉経後女性の膀胱炎も広義には急性単純性膀胱炎としてとらえてよいが,閉経前女性に比べると感染防御能の低下状態にあることが多い。

    ▶診断のポイント

    膀胱炎の臨床症状として頻尿,排尿痛,尿混濁,残尿感,膀胱部不快感などを認めるが,通常,発熱は伴わない。尿検査は診断に必須で,膿尿や細菌尿がみられる。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    単純性尿路感染症においては,感受性のある有効な抗菌薬を選択できれば,内服抗菌薬投与のみで治癒が期待できる。しかし,近年ペニシリン系薬やセフェム系薬に耐性を示すESBL産生グラム陰性菌が増加の一途をたどっていること,またESBL産生グラム陰性菌の多くが同時にキノロン耐性遺伝子を持ち合わせている場合が多いことから,単純性尿路感染症の治療も一筋縄ではいかない状態になってきている。

    閉経前女性と閉経後女性の違いを考慮し,原因菌推定に基づいた抗菌薬を選択すべきである。若年の閉経前女性はグラム陰性菌が約70%,グラム陽性菌が約30%とグラム陽性菌の比率が高いが,閉経後女性はグラム陰性菌が約90%とグラム陰性菌の比率が高い。閉経前女性においては大腸菌におけるESBL産生菌の割合は約7% 、キノロン耐性率も約10%と高率になってきているため、もはやキノロン系抗菌薬は可能な限り使用すべきではない。一方,閉経後女性においては,大腸菌におけるESBL産生菌ESBL産生菌の割合は約15%、キノロン系薬の耐性率が30%近くあるため、やはり従来通り閉経前女性と同様にニューキノロン系薬の使用は極力控えるべきである。

    そのため筆者は,閉経前女性と閉経後女性に限らず,グラム陽性菌にもESBL産生グラム陰性菌にもある程度有効なβラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリンを第一選択とし,有効性がみられない場合には速やかに尿培養による抗菌薬感受性試験を実施して,抗菌薬を選択することにしている。ESBL産生菌であることが判明している場合には,ホスホマイシンまたはファロペネムが有効とされている。

    通常の内服抗菌薬にてなかなか軽快しない場合,反復性・難治性の場合,膿尿や細菌尿が消失した後にも強い排尿痛・頻尿または血尿などの症状が残存する場合には,結核性膀胱炎,膀胱上皮内癌,間質性膀胱炎,骨盤内腫瘍などの疾患を除外する必要があるため,泌尿器科専門医にコンサルトすべきである。

    男性の尿路感染症は,原則全例複雑性尿路感染症としてとらえるべきであり,同じく速やかに泌尿器科専門医にコンサルトすべきである。

    残り715文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    関連求人情報

    公立小浜温泉病院

    勤務形態: 常勤
    募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
    勤務地: 長崎県雲仙市

    公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
    現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
    2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
    6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

    当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
    2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
    又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

    ●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
    今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

    もっと見る

    関連物件情報

    もっと見る

    page top