妊産婦の脳卒中は、リスク因子や予後に不明な点が多い。これは米国でも同様だという。そこでAayushi Garg氏(アイオワ大学、米国)は米国大規模データベースを用いてそれらを検討し、9日から米国ニューオーリンズで開催された国際脳卒中学会(ISC)で報告した。脳循環の器質的障害が大きなリスクであるだけでなく、生活習慣病などによるリスク増加幅も相当な大きさである可能性が示された。
今回解析対象となったのは、全国データベースへ2016~18年に登録された妊娠脳卒中3498例と、脳卒中以外の妊娠関連入院例の5%標本となる62万8106例である。平均年齢は29歳。脳卒中の内訳は、脳出血が56%、脳梗塞が47%、脳静脈洞血栓症が3%だった(重複あり)。
これら63万例強から、妊娠脳卒中と独立して相関する発症前因子を洗い出したところ、「可逆性脳血管攣縮症候群」(オッズ比[OR]:690.1)、「脳動静脈奇形」(209.8)、「もやもや病」(103.6)、「頭蓋内動脈瘤」(86.0)といった器質的異常を筆頭に、「高血圧」(12.4、95%信頼区間[CI]:9.8-15.8)、「脂質異常症」(9.0、6.7-12.1)、「心房細動」(7.1、3.8-13.3)、さらに「片頭痛」(4.8、3.9-6.0)などが挙がった。なお「妊娠高血圧症候群」のORは2.5(2.2-2.8)、「10歳加齢」は1.3(1.1-1.4)だった。
次に転帰だが、脳卒中例の院内死亡率は5.3%(非脳卒中入院例の院内死亡率は0.01%)、自宅以外への退院率は29.7%だった。なお、脳梗塞例のうちtPA静注を受けていたのは4%のみで、血管内治療が7%だった。
脳卒中再発は、退院後平均183日の間に1.9%で観察された。再発までの期間平均値は43日だった。再発率は脳出血よりも脳梗塞で高い傾向が見られた。さらに詳細な解析が待たれる。
本研究には開示すべきCOIは存在しないとされた。