血清リン濃度が5mg/dL以上を高リン血症と言う。高リン血症には特異的な症状はないが,慢性の高リン血症では異所性石灰化が問題となる。リンのバランスを考えると,高リン血症が起こるのは限られた病態であり,最も多いのが慢性腎臓病(CKD)である。腎機能が正常であって高リン血症を生じうる疾患には,副甲状腺機能低下症が挙げられる。
高リン血症を起こす病態は,①腎臓からのリンの排泄低下,②リンの過剰摂取,③リンの細胞内外での分布変化,の3つが考えられる。
CKDが最も多い原因である。実際にCKDにおいて高リン血症がみられるようになるのは,GFRが20~25mL/分以下になってからである。副甲状腺ホルモン(PTH)の欠乏である副甲状腺機能低下症,作用不全である偽性副甲状腺機能低下症では,高リン血症が起こる。また,成長ホルモンおよび甲状腺ホルモンはリンの再吸収能を増加させることにより,高リン血症を起こす。
リンを含有する便秘薬の服用,リンの静脈内投与,ビタミンD製剤による腸管からのリンの過剰吸収などの薬剤性のものが考えられる。
アシドーシス,特にケトアシドーシスや乳酸アシドーシスでは,リンの細胞内から細胞外へのシフトが起こることにより高リン血症が生じる。リンは細胞内に多く含まれるので,細胞の破壊が起こる腫瘍崩壊や横紋筋融解でも高リン血症が生じる。横紋筋融解症では,融解した横紋筋にカルシウムが沈着するので,低カルシウム血症を伴うのが特徴である。
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