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高ナトリウム血症[私の治療]

No.5108 (2022年03月19日発行) P.41

寺田典生 (高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科教授)

大出佳寿 (高知大学医学部内分泌代謝・腎臓内科)

登録日: 2022-03-21

最終更新日: 2022-03-15

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  • 高ナトリウム血症は,血中ナトリウム(Na)濃度が145mEq/L以上と定義される。ヒトが排泄もしくは喪失する体液の多くは低浸透圧性であるため,十分な水分摂取が行えない場合には容易に高ナトリウム血症を生じる。そのため,高齢者や幼児,認知症患者,障害者など自力での水分摂取が困難な患者に頻発する。高ナトリウム血症は,低ナトリウム血症よりも頻度は低く入院患者の2%程度と推測されている。また,高ナトリウム血症は外来に通院している患者よりも,入院が必要な重篤な患者にみられることが多い。入院中の薬剤や点滴により,医原性に高ナトリウム血症が引き起こされる場合もあり,注意が必要である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    急性の高ナトリウム血症では,血液の張度上昇に伴い細胞内脱水を起こす。それにより脳細胞萎縮をきたし,意識障害,悪心・嘔吐,口渇感などを生じる。慢性の場合は,低ナトリウム血症の場合と同様に,脳細胞の防御機構により脳細胞萎縮を防ぐため,症状に乏しいこともある。

    【鑑別診断】

    高ナトリウム血症の原因は,①体内総Na+体内総カリウム(K)の増加,または②体液量の減少,の2パターンである。一般的には②のケースが多い。

    ①のケースとしては,院内における代謝性アシドーシス等の治療の際の炭酸水素Naや高張食塩水の点滴等による医原性がある。院外においては,海水溺水,砂糖と食塩の間違いなどがある。②では,患者は自由水喪失量>自由水摂取量の状況にある。自由水喪失には,腎性喪失(浸透圧利尿,尿崩症)と皮膚(汗など),腸管(下痢など)等の腎外性喪失がある。自由水摂取量の低下は,飲水行動の欠如に起因する。すなわち,高ナトリウム血症の原因は,経口摂取や点滴によるNa負荷,もしくは低張液の排泄亢進である。

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