男女の性別を規定する因子は決して単一のものではない。性染色体,性腺,内性器,外性器,性ホルモンによる二次性徴,法律上の性すなわち戸籍などに登録された性,心理的要素を含んだ社会的な性,など様々なものがある。それら全項目が男女のいずれかに統一した状態になるのが一般的な性別である。これら各因子の統一性のない状態が性分化疾患(disorders of sex development:DSD)となる。以下にDSDに含まれる各疾患を解説する。
先天性副腎過形成症の90%以上は21-水酸化酵素欠損症によるものである。21-水酸化酵素の合成が障害されるとコルチゾールおよびアルドステロンの産生が障害され,過剰なアンドロゲンが分泌される。
塩喪失型や単純男性化型の女性では,アンドロゲンの過剰分泌により,出生時に陰核肥大,陰唇癒合,共通泌尿生殖洞などの外性器の男性化が認められる。
男性化が顕著な女児に対して,女性外陰形成術(陰核形成術・小陰唇形成術・腟形成術)を行う。
同一個体に精巣組織と卵巣組織を同時に有する状態を卵精巣性DSDと言う。染色体の核型は様々で,46,XXが71%,46,XYが7%,46,XX/46,XYなどのモザイク型が20%である1)。性腺は,50%の症例は一側が卵精巣で他側が卵巣あるいは精巣で,20%は両側とも卵精巣,30%は一側卵巣で他側精巣である。卵巣の発達はよい。
外性器は,多くの症例で男性か女性かの判別が困難である。男性として養育される場合,80%に尿道下裂が認められる。女性として養育される症例の2/3は陰核肥大を,全例が共通泌尿生殖洞を有する。内性器は同側の性腺に即した分化を呈することが多い。
女性として養育される場合,精巣組織を摘除する。卵精巣であった場合には,精巣組織のみを摘除する。卵巣組織が温存された場合には,適切なホルモン療法のもとに思春期には卵巣機能が回復することが期待できる。ただし,温存した卵巣の悪性化に留意して,MRIなどによる経過観察を行う必要がある。場合により陰核形成術,腟造設術などを行う。
男性として養育される場合,卵巣組織を摘除する。停留精巣である場合には陰囊内に精巣固定術を行い,定期的に触診や超音波検査で悪性化のチェックを行う。尿道下裂に対しては尿道形成術を行う。
5α-還元酵素によりテストステロンから産生される5α-dihydrotestosterone(DHT)が外性器を男性化させる働きをしているため,5α-還元酵素欠損症の患児では外性器の男性化が阻害され,中間型の外性器を示す。その程度は比較的軽度のものから女性型に近いものまで様々である。陰茎は種々の程度の小陰茎,尿道下裂を呈する。精巣は停留精巣となるものもある。
血清テストステロンは上昇するが,DHTは低値を示す。hCG試験により,テストステロン/DHT比は正常では3~25であるが,75~160に上昇する。
女性として養育される場合には,男性化が進む前に両側精巣を摘除し,女性外陰形成術を行う。男性として養育される場合,精巣固定術,尿道下裂修復術を行う。
性腺は精巣で,正常にテストステロンを産生するが,末梢組織のアンドロゲン受容体機能不全のため胎児期および出生後の男性化がみられない。外性器は女性型で,陰核は正常サイズで腟下部2/3が存在する。思春期には精巣から分泌されるテストステロンがアロマターゼの作用によりエストラジオールに変換されることによって女性の二次性徴が出現し,正常の乳房発達が起こって成人女性体型になる。外性器は完全な女性型で,精神的にも行動的にも完全に女性である。
女性外陰形成術の必要はない。両側精巣摘除術を行うが,悪性化のリスクがあるので診断がつき次第行うという考えと,自然に思春期が進行して女性の二次性徴が進行してから施行するという考えがある2)。
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