1 高尿酸血症の治療によるCKDの進行抑制
尿酸の約70%は腎臓から排泄されるため,尿酸排泄が低下する慢性腎臓病(CKD)では,高尿酸血症が認められることが多い。
最近の研究から,高尿酸血症はCKDの発症や進行の危険因子であり,無症候性高尿酸血症の治療によりCKDの進行を抑制できる可能性があると考えられている。
最新の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」においても「腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して,腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることを条件つきで推奨する」と記載されている。
2 高尿酸血症とは
高尿酸血症の定義は尿酸の溶解度である6.4mg/dLに基づいており,性・年齢を問わず,血清尿酸値が「7.0mg/dLを超えるもの」とされている。
高尿酸血症は尿酸排泄低下型,腎負荷型,混合型に大別される。腎負荷型には尿酸産生過剰型と,最近提唱され始めた腎外排泄低下型の2つがある。
3 CKDと高尿酸血症
高尿酸血症によるCKD発症・進展のメカニズムは多様であり,レニン・アンジオテンシン系の活性化,NADPHオキシダーゼ活性化による酸化ストレス,ミトコンドリア機能障害,内皮機能障害,血管平滑筋細胞の増殖などがある。
4 尿酸降下薬の種類とCKDにおける選択
尿酸降下薬は尿酸生成抑制薬,尿酸排泄促進薬,尿酸分解酵素薬に大別される。
一般的には,原則として尿酸産生過剰の患者には尿酸生成抑制薬を,尿酸排泄低下の患者には尿酸排泄促進薬を使用することが推奨されている。
CKD合併の高尿酸血症に対しては,原則として尿酸生成抑制薬を用いる。
尿酸生成抑制薬には,アロプリノール,フェブキソスタット,トピロキソスタットがある。
5 ガイドラインにおける高尿酸血症の位置づけ
「エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2018」には,「高尿酸血症を有するCKD患者に対する尿酸低下療法は腎機能悪化を抑制し,尿蛋白を減少させる可能性があり,行うよう提案する」と記載されている。
また,CKDを伴う無症候性高尿酸血症の治療は,血清尿酸値が8.0mg/dL以上の場合には生活指導を行った上で薬物治療を考慮するとされている。
一方,欧米のガイドラインでは,痛風関節炎を伴わない無症候性高尿酸血症に対して薬物治療は必要でないとされており,血清尿酸値にかかわらず治療は生活指導が主体である。
6 CKDを伴う高尿酸血症の尿酸降下療法について
CKD合併の高尿酸血症に対しては,原則として尿酸生成抑制薬を用いる。
新規の尿酸生成抑制薬であるフェブキソスタットとトピロキソスタットは,腎機能が低下した患者においても血清尿酸値を目標値まで低下させることが可能である。
尿酸の約70%は腎臓から排泄されるため,尿酸排泄が低下する慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)では,高尿酸血症が認められることが多い。CKDにみられる高尿酸血症は腎機能低下に伴って出現する二次的なものであり,治療介入は不要であると従来考えられていた。
その一方で,最近の研究から,高尿酸血症はCKDの発症や進行の危険因子であり,無症候性高尿酸血症の治療によりCKDの進行を抑制できる可能性があると考えられている。最新の「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版」においても「腎障害を有する高尿酸血症の患者に対して,腎機能低下を抑制する目的に尿酸降下薬を用いることを条件つきで推奨する」と記載されている。
高尿酸血症の定義は尿酸の溶解度に基づいており,性・年齢を問わず尿酸の血中での溶解度である6.4mg/dLよりも高い「7.0mg/dLを超えるもの」とされている。ただし,血清尿酸値が7.0mg/dL以下であっても,血清尿酸値の上昇とともに生活習慣病のリスクが高くなる。
高尿酸血症は尿酸排泄低下型,腎負荷型,混合型に大別される。腎負荷型には尿酸産生過剰型と,最近提唱され始めた腎外排泄低下型の2つがある。実地臨床においては,この病型分類を24時間家庭蓄尿で行うことは容易ではない。24時間蓄尿を行わずに,随時尿を用いた簡便法でも十分に病型分類を行うことができることが報告されている1)。「随時尿の尿酸濃度(mg/dL)÷尿Cr濃度(mg/dL)」が0.5より高ければ尿酸産生過剰型,0.5未満であれば尿酸排泄低下型と考えてよい。
高尿酸血症は自覚症状を伴わないため,健康診断などで偶然発見されることが多い。高尿酸血症の原因として,核酸代謝関連酵素の遺伝子変異や,尿酸トランスポーター(輸送体)の機能喪失変異が示唆されている。また,尿酸トランスポーターに単一遺伝子や多遺伝子の異常があることが示唆されている。食事,飲酒,運動などの生活習慣を含む様々な環境因子も高尿酸血症の発症と強く関連している。