尿管異所開口(異所性尿管)は,尿管が膀胱三角部より尾側の異所に開口する病態である。尿管芽の発生位置異常が原因であり,重複尿管での異所開口も認められる。女児が男児より3~6倍多く,10%が両側性である。
尿管異所開口は,男児では括約筋より頭側に開口し,女児は括約筋より尾側に開口するために臨床像が大きく異なる。
女児では外尿道括約筋より尾側の腟・尿道・腟前庭部などに開口し,尿失禁の主訴が多くなる。また,ガートナー管囊胞を経由して異所開口を認める症例もある。女児の片側腎の低異形成・萎縮,無形成疑いの症例を認めたときは,尿管異所開口の存在を疑う必要がある。男児では外尿道括約筋の頭側(精囊・精管・膀胱頸部,前立腺部)の開口が経験される。異所開口していても尿道開口の際の逆流による尿路感染・尿管拡張が問題になる以外,思春期以降に判明する精囊腺囊胞や精管拡張などの異常を引き起こす原因となる。
また特殊な病態としては,女児では片側の腎形成異常,同側の尿管異所開口,重複子宮・腟,腎形成異常側の腟閉鎖を起こすOHVIRA(obstructed hemivagina with ipsilateral renal anomaly)症候群,男児では片側の腎形成異常と同側の尿管異所開口,精囊腺囊胞を呈するZinner症候群が知られている。
女児の尿管異所開口の場合,同側の腎の状態(サイズ・機能・位置),膀胱後面の囊胞性病変の有無,異所性尿管の拡張の有無,単一/重複腎盂尿管なのか,が確認すべき点である。男児の場合は,膀胱頸部・前立腺部尿道の異所開口尿管で拡張・尿路感染を認める場合以外は臨床所見に乏しく,特に治療の必要がない場合が多い。
検査としては,画像検査としての超音波検査,必要があればCT,MRI検査を行い,異所開口尿管所属腎の機能を評価し,治療方針決定のために腎シンチグラムを必要とする。尿路への異所開口を疑う場合は排尿時膀胱造影の施行も勧められる。
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