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小児呼吸器感染症における喀痰培養提出の意義と臨床応用について

No.5114 (2022年04月30日発行) P.51

伊東宏明 (亀田総合病院小児科主任部長)

保科隆之 (産業医科大学医学部小児科学教室准教授)

登録日: 2022-05-02

最終更新日: 2022-04-28

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  • 小児呼吸器感染症における喀痰培養提出の意義と臨床応用についてご教示下さい。
    産業医科大学・保科隆之先生にご解説をお願いします。

    【質問者】

    伊東宏明 亀田総合病院小児科主任部長


    【回答】

     【喀痰培養は初期治療不応時の抗菌薬選択と初期抗菌薬療法確立のための現況把握に有用】

    細菌性肺炎の起炎菌同定に喀痰培養は有用です。しかし,乳幼児は自力で排痰できないため,経鼻または経口吸引により喀痰が採取されますが,そのようにして採取された検体には上気道成分が多く含まれ,肺炎の起炎菌推定には不適切と考えられてきました。喀痰の代わりに鼻腔・咽頭ぬぐい液を用いることもありますが,喀痰との培養一致率は低く,肺炎の起炎菌同定に有用な血液培養の陽性率は5%未満です1)。このような状況から,小児の肺炎の起炎菌検索のために,高張食塩水吸入や吸引チューブ挿入の刺激によって咳嗽を誘発し,良質な喀痰を採取するような方法が用いられています2)3)

    筆者の過去の研究では,細菌性下気道炎が疑われた小児から経鼻下咽頭吸引により喀痰を採取し,グラム染色後にGeckler分類を用いて性状を評価したところ,約70%の症例から下気道分泌物と判定されるGeckler 4または5であった検体を採取できており,血液培養陽性率よりもはるかに高い60%以上の症例で起炎菌推定が可能であったことから3),小児の細菌性肺炎の起炎菌検索のために,吸引によっ喀痰を採取すべきと考えます。

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