心室細動はすぐに停止させないと,生命の維持ができない状態である。循環動態は破綻し,心肺停止状態に陥るため,二次救命処置(ACLSアルゴリズム)にて,一刻も早く停止を試みなければならない。心拍再開後は,基礎心疾患(急性冠症候群や心不全,遺伝性心疾患など)や循環動態および電解質を含む血液データの評価を行い,治療を行う。
循環動態の破綻とモニター心電図での心室細動波形にて診断が可能である。心室細動では早期の停止が重要であり,12誘導心電図は不要である。
心室細動に対しては「CPRおよびECCのガイドライン」1)に従い二次救命処置を行う。胸骨圧迫と気道確保および酸素投与を行い,モニター心電図で心室細動が確認されれば,電気的除細動(DC)を行う。二相性であれば120~200J,単相性であれば360Jで使用する。また,3~5分ごとにアドレナリン1mgを静脈投与し,2分ごとにリズムチェックを行い,心拍再開(ROSC)を評価する。心室細動が停止しない場合には,アミオダロン塩酸塩150mg(最大450mgまで)やニフェカラント塩酸塩0.3mg/kgの投与を行う2)。場合によってはリドカイン塩酸塩1.5mg/kg(最大3mg/kgまで)の静脈投与も考慮し,心肺蘇生およびDCを繰り返す。
ROSC後には,血液データの評価に加えて,12誘導心電図,心エコーなどにて,心室細動をきたす基礎疾患や状態の評価を行う。急性期には5H〔循環血液量減少(出血など),低酸素症(気道閉塞),アシドーシス(腎不全など),低/高カリウム血症,低体温〕および5T(緊張性気胸,心タンポナーデ,毒物,急性冠症候群,肺血栓塞栓症)をまず鑑別する。一方,ROSC後の心電図からはQT延長症候群やブルガダ症候群,また不整脈原性右室心筋症なども診断可能である。経過中に心室細動が再発する場合には,アミオダロン塩酸塩やランジオロール塩酸塩およびニフェカラント塩酸塩などの持続点滴を開始するとともに,病態の把握および増悪因子の評価を行い対応する。
安定期には,心疾患の評価を行う。一般的には,器質的心疾患に伴う低心機能患者で致死性不整脈が発生することが多いが,心不全の関与の有無や,心筋症(肥大型心筋症,心サルコイドーシス,心アミロイドーシス等)などの診断を行う。心疾患の原因検索には,CTやMRIに加えて,冠動脈造影が行われるが,必要であれば心筋生検などを行う。その後,基礎心疾患に合わせて加療を進めるが,非可逆的原因による場合は,植込み型除細動器もしくは両室ペーシング機能付き植込み型除細動器を使用し,突然死の予防を行う。
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