慢性腎臓病(CKD)治療薬として、近年、SGLT2阻害薬とミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA、アルドステロン拮抗薬)が注目されている。またいずれの薬剤も、アルブミン尿(尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR])の有意な減少作用が、大規模ランダム化試験(RCT)から報告されている(DAPA-CKD[Lancet Diabetes Endocrinol. 2021;9:755]、FIDELIO-DKD[Diabetes Obes Metab. 2022;24:125])。そうなると気になるのが、これら両剤併用でアルブミン尿抑制作用が増強されるかという点だ。この点を検討したRCT“ROTATE-3”が、J Am Soc Nephrol誌HPで7月13日に先行公開され、小規模試験ながら注目を集めているようだ。概要を紹介したい[DOI: https://doi.org/10.1681/ASN.2022020207]。
ROTATE-3試験の対象は、忍容最大用量のレニン・アンジオテンシン系阻害薬服用下で、24時間尿中アルブミン排泄量「≧100mg」、かつ推算糸球体濾過率(eGFR)「30~90mL/分/1.73m2」、血清カリウム(K)「≦5mmol/L」だった、欧州在住の46例である(平均eGFR:58.1mL/分/1.73m2、UACR中央値:401mg/gCr、血清K値不詳)。
これらはSGLT2阻害薬(ダパグリフロジン10mg/日)群、MRA(エプレレノン50mg/日)群、同量のSGLT2阻害薬・MRA併用群の3群にランダム化され、4週間服用後に4週間の非服用期間をはさみ、ランダムな順番で全レジメンを服用した(MRAは、冒頭で紹介した大規模試験で用いられた薬剤とは別)。
その結果、4週間服用後のUACR低下率は、SGLT2阻害薬(-19.6%)、MRA(-33.7%)単剤に比べ、両剤併用(-53%)で有意に大きかった。またいずれの薬剤も、「単剤併用」時のUACR変化率は「両剤併用」時のUACR変化率とは相関していなかった。この結果から原著者らは、いずれかの単剤でUACRが低下しない例でも、両剤併用であればUACRの低下が期待できると考察している。
さらに高K血症の発現頻度は、「MRA単独」(17.4%)に比べ「両剤併用」(4.3%)で有意に低くなっていた。
SGLT2阻害薬とMRAの併用による高K血症減少は、MRAフィネレノンの腎保護作用を検討したRCT “FIDELIO-DKD”の後付解析からも報告されている[J Am Soc Nephrol. 2022;33:225]。そのため原著者らは、SGLT2阻害薬とMRAの併用は安全性という観点からも魅力的としながらも、有効性を含め、より長期にわたる観察の必要性を指摘していた。
本試験は、グローニンゲン大学(オランダ)がスポンサーとなって実施された。