腎糸球体メサンギウム領域へのIgA優位な沈着を呈する原発性糸球体腎炎であり,わが国で最も疾患頻度の高い糸球体腎炎である。本症の年齢分布は30~39歳にピークがあるものの,10歳代から50歳代まで広く分布しており,発症率,有病患者数における性差は認めない。未治療のまま経過すると30~40%は末期腎不全に至る予後不良の疾患で,指定難病に認定されている。
ほとんどが無症状で,検尿における尿所見異常を契機に診断されるものが大部分である。上気道感染を契機に肉眼的血尿を認めることがある。
検尿で持続的顕微鏡的血尿を呈することが特徴であり,進行するとともに間欠的または持続的蛋白尿を呈する。血液検査でIgA腎症に特異的な所見はないものの,血清IgA高値(315mg/dL以上),IgA/C3高値(3.01以上)はIgA腎症の鑑別に有用である。しかし,IgA値が高値を示すのは約3~5割であり,注意が必要である。
確定診断には,腎生検による病理組織診断が必須であり,糸球体のメサンギウム領域を主体にIgA優位の免疫沈着物を認めた場合に診断される。わが国では,2011年に「IgA腎症診療指針第3版」で提唱された臨床的重症度分類(C-Grade)と組織学的重症度分類(H-Grade)を組み合わせた透析導入リスク分類が頻用されている。また,2009年に報告されたOxford分類(MEST-C score)も併せて使用されている。
レニン-アンジオテンシン(RA)系阻害薬,副腎皮質ステロイド,口蓋扁桃摘出術〔+ステロイドパルス併用療法(扁摘パルス療法)〕,免疫抑制薬,抗血小板薬,n-3系脂肪酸(魚油)などが標準的治療法として挙げられる。治療法は,腎機能や尿蛋白量を中心に,腎病理組織所見や年齢なども含めて総合的に判断する必要がある。わが国では扁摘パルス療法が広く施行されており,近年のメタ解析や大規模コホート研究などでその有効性が実証されてきている。また,慢性腎臓病(CKD)に対する一般的治療法としての血圧管理や減塩,脂質管理,禁煙指導なども併せて行う。
RA系阻害薬の初回投与時には,腎機能の推移に注意しながら慎重に投与する。腎硬化病変に対しては,副腎皮質ステロイドによる悪化が懸念される。個々の症例で治療効果と感染症などの副作用リスクとのバランスを十分考慮する。
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