様々な原因による腎動脈の狭窄や閉塞に伴う高血圧である。若年発症の高血圧,治療抵抗性高血圧,原因のはっきりしない進行性腎障害や肺水腫を呈する患者等にみられることが多い。腎臓は左右1対なので,片方だけ腎動脈狭窄のある片側性腎動脈狭窄と両方とも細い両側性腎動脈狭窄にわけられる。
腹部の血管雑音は有名であるが,あまり聴かれず背部からのみ聴取できることもある。診断には画像検査が有用である。やせ型の患者であれば,腹部超音波ドップラーは診断能力が高く,腎動脈血流速度などで評価する。また,患側の腎臓が小さいことも散見される。肥満を伴っている患者では,造影CTやMRAが選択される。造影CTの解像度はすばらしいが,腎障害があると造影剤が使用できないので,非造影のMRAで診断を行う。MRAでは造影の有無により診断能は大きく変わらない。機能検査は,血漿レニン活性やレノグラム(カプトプリル負荷)などを基本とする。しかし,本態性高血圧でも高レニンを示す例は時にみられ,両側性腎動脈狭窄での低レニン例を含めて機能検査の診断能が高くない。
片側性腎動脈狭窄に対してはレニン・アンジオテンシン系(RAS)の抑制が中心となる。しかし,両側性腎動脈狭窄の症例にはRAS阻害薬は禁忌となるので,カルシウム拮抗薬を中心とした治療を行う。脂質異常症を伴う患者にはリピトールⓇ(アトルバスタチンカルシウム水和物)等のストロングスタチンを併用する。
薬物療法だけでは血圧コントロールが不十分な症例に対しては,経皮的腎動脈形成術(PTRA)やバイパス術などの血行再建術が必要となる。なお,PTRAは肺水腫を伴う両側性腎動脈狭窄の患者には圧利尿を改善するので有効なことがあるが,腎動脈狭窄に伴う腎機能障害の進行抑制に関しては薬物療法と同等であり,積極的適応に乏しい。
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