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[討論 Pro×Pro]コロナ後遺症診療アップデート─診療所・病院に求められる役割(丸毛 聡×平畑光一)

No.5131 (2022年08月27日発行) P.14

登録日: 2022-08-31

最終更新日: 2022-09-22

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医師・医療従事者向け動画配信サービス「Web医事新報チャンネル」(www.jmedj.co.jp/movie/)では8月25日よりスペシャル対談「コロナ後遺症診療アップデート」(全5回)の配信を開始しました。本対談では、新型コロナ後遺症診療の最前線に立つ2人の医師、北野病院の丸毛聡感染症科・呼吸器内科部長とヒラハタクリニックの平畑光一院長が、いまとるべき治療戦略、患者を孤立させないための支援、ワクチン後遺症の実態などについて徹底討論します。ここでは診療所・病院の役割などをめぐるディスカッションをダイジェストでお届けします。(対談は8月4日に収録しました)

患者は待っていられない

平畑 新型コロナ後遺症の診療で一般の診療所にお願いしたことは何ですか。

丸毛 一般の診療所はコロナ後遺症に関しては非専門という立場の診療所がほとんどだと思います。いま頼りになるのは、厚生労働省の「診療の手引き」(新型コロナウイルス感染症 罹患後症状のマネジメント)くらいなので、手引きに従って対応し改善しない場合は専門医に紹介する、ということになると思いますが、(患者さんの人生を考えると)そんなに待ってはいられません。

医療従事者でも倦怠感などの後遺症に苦しんでいる方がたくさんいますが、確かに上咽頭擦過療法(EAT)が効くケースがあり、まずはそうした治療を試みるべきです。患者さんが長く苦しむことがないよう、治療の均てん化を進め、診療所でも最新の治療が気軽にできるような形になることが重要だと思います。

後遺症外来ですべての患者を診るのは無理

平畑 私も得られた知見をできるだけ公開するようにしていますが、国や学会が知見を共有する場をつくっていく必要があると思っています。

病院としてはどのような患者を送ってほしいですか。

丸毛 コロナをきっかけに、関節リウマチ、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患の確定診断に至った症例もありますし、倦怠感で苦しんでいる患者さんの中に特定の疾患が隠れている可能性があります。(診療所で)広く診ていただいた上で、よくならない特異的な臓器症状や自己免疫疾患等を調べるのが総合病院の役割と思っています。

平畑 コロナ後遺症の患者が数十万人~100万人いるかもしれないという状況ですので、すべての患者をコロナ後遺症外来だけで診るのはほぼ無理です。診療所で一般的な治療を試し、臓器の症状があれば専門医に紹介するというのがいいと思います。

亜鉛値など血液検査はしてほしい

平畑 「診療所でこれはやっておいてほしい」という検査はありますか。

丸毛 絶対に検査をしないといけないということはないと思っています。ただ、上咽頭擦過療法や亜鉛の補充はベースの治療になっていますので、亜鉛値を含めて血液検査はしていただきたいですね。

平畑 私も全く同じことを考えています。

亜鉛欠乏が味覚・嗅覚障害や脱毛の原因になるというのは昔から知られていることです。亜鉛を補充するだけで症状が改善するケースは少なくないですし、貧血があるのに「だるさを訴えているから後遺症だろう」と決めつけることもあってはいけない。そういう検査をしておくことは大事だと思っています。

基本的な疾患のルールアウトという意味で、X線や心電図をやっておくのも悪くはないと思います。

疑い病名でもいいので診断を

丸毛 総合病院にはどのような役割を期待していますか。

平畑 病院によっては、患者さんが「コロナ後遺症かもしれない」と相談をしてきたときに冷たい対応をしてしまうケースもあると聞いています。他の疾患の可能性がない場合には、診断書くらいは書いていただきたいと思います。

診療所でいきなり診断をつけるのは少しハードルが高いケースもある。しかし、どこかのタイミングで診断をつけてあげないと患者さんは生活に困ってしまう。疑い病名でもいいので診断をつけておいていただけると、その後の対応がスムーズになると思います。

後遺症に向き合うこと

丸毛 後遺症のことがいわれ始めた頃、The New England Journal of Medicine等の有名誌が「医療者はコロナ後遺症を無視しすぎだ」「向き合っていない」と論じた。それくらいコロナ後遺症はみんなが避けてしまうところがあった。しかし、これだけの数の患者が悩んでいる。悩んでいる内容も「復職できない」「仕事に就けない」という大きな悩みです。向き合うことが必要だと思います。

診療報酬の評価が低すぎる

丸毛 どのようにすれば一般の診療所が後遺症診療に参加できるようになるでしょうか。

平畑 非常に難しい問題ですね。行政からの後押しも必要ですし、現実問題として大きいのは診療報酬の(評価が低いという)問題です。

20分、30分診療して診療報酬が700円くらいでは敬遠してしまう先生がいるのは仕方がない。臨床医の良心に甘えていると言っても過言ではない状況です。エビデンスがそろってきたら診療報酬の面は少し手を入れるべきだと思います。

丸毛 個人的には平畑先生のYouTubeを視ることが最初の入り口だと思います。その上で診療を経験しないといけない。経験しないはずがない疾患ですので。

上咽頭擦過療法のようなエアロゾル発生処置で非常に危険といわれていることをすすんでやってくださっている先生がいるということを、診療報酬に反映させるのは重要なことだと思います。


【関連情報】

平畑光一医師が運営する新型コロナ後遺症情報サイト「longcovid.jp」

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