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特集:腎代替療法の選択基準と患者への説明ポイント

No.5131 (2022年08月27日発行) P.18

福永昇平 (島根大学医学部附属病院腎臓内科)

伊藤孝史 (島根大学医学部附属病院腎臓内科教授)

登録日: 2022-08-26

最終更新日: 2022-08-24

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福永昇平
2010年島根大学卒業。2019年4月より島根大学医学部附属病院腎臓内科助教,2019年11月より島根大学医学部附属病院腎臓内科副診療科長。腎臓病,透析療法を専門とする。

1 腎代替療法について
腎機能障害が進行し,末期腎不全(ESKD)の状態になると尿毒症症状が出現し,徐々に生命の維持が困難となる。尿毒症症状の改善,生命維持のためには腎代替療法が必要となる。
腎代替療法は永続的に行う必要があり,ライフスタイルに大きな影響を与える治療である。各腎代替療法には医学的な禁忌があるが,どの腎代替療法を選択すべきか明確な基準はない。このため,腎代替療法について患者,家族が十分に理解し,療法選択を行う必要がある。

2 腎代替療法の種類
腎代替療法には,透析療法と腎移植の2通りがある。透析療法には,血液透析(HD)と腹膜透析(PD)がある。腎移植には,生体腎移植と献腎移植がある。これらの治療方法は相補的なものである。
PDで開始後,HDの併用やHDへの移行を行うことがある。また,PD,HDを行った後,腎移植を行うことも可能である。さらに,透析療法を行わずに腎移植を行うこともあり,これは「先行的腎移植(PEKT)」と呼ばれる。

3 腎代替療法に関する情報提供の時期
腎代替療法は,患者,家族がきちんと理解した上で選択する必要があり,医療者との信頼関係の構築も必要である。腎代替療法を開始するためには事前の準備が必要であり,適切な時期に専門医への紹介が必要である。
進行性に腎機能の低下がみられ,eGFRが30mL/分/1.73m2に至った時点で腎代替療法の説明を行うことが望ましい。

4 腎代替療法選択の意思決定
腎代替療法の選択が,患者やその家族の生活に与える影響は大きい。このため,患者が患者らしい生活を行えるように意思決定をサポートする必要がある。
腎代替療法の意思決定は,患者,家族,医療者が共同で行うことが望ましい。各療法の詳細,利点,欠点を伝え,患者および家族のライフスタイルや価値観を引き出し,理解し,話し合いを進めていく。これを「シェアード・ディシジョン・メイキング(SDM)」と言う。
SDMにより決定困難な臨床的決断が容易になる。また,診療の質の改善,患者満足度の向上,医療費の軽減が期待できる。

伝えたいこと…
腎代替療法の選択には患者,家族への正確な情報提供が不可欠であるが,それだけでは不十分である。腎代替療法の選択は患者,家族の人生を大きく変えるものであるため,患者,家族のライフスタイル,価値観を共有し,医療者も含めた関係者すべてが共同で意思決定を行うことが重要である。

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