肺非結核性抗酸菌症(pulmonary nontuberculous mycobacterial infection)は,環境常在菌である非結核性抗酸菌の吸入曝露による慢性呼吸器感染症である。わが国の患者の9割は,Mycobacterium aviumとM. intracellulareによる肺M. avium complex(MAC)症である。本稿では,肺MAC症の初回治療について概説する。
本症に矛盾しない胸部画像所見を呈し,一般に2回以上の異なった喀痰検体で培養陽性となった場合,他の疾患を除外した上で診断する。
肺MAC症の病型には,結節・気管支拡張型と線維空洞型がある。結節・気管支拡張型では中葉や舌区を中心に気管支拡張と小結節が多発し,線維空洞型では上肺野中心に空洞が多発する。線維空洞型の病状進行は一般に速く,予後不良である。これに対し結節・気管支拡張型では症例ごとで異なり,病状が長期間安定する症例も珍しくない。近年診断される肺MAC症のほとんどは,中高年女性に好発する結節・気管支拡張型である。
リファンピシンは血中濃度の観点から,「原則として朝食前空腹時投与」と添付文書に記載されているが,胃腸障害の副作用を軽減するために食後投与とする。また,70歳以上の高齢者では,多剤の内服を一挙に開始せず,1週間に1薬剤ずつ追加すると,副作用による早期中止を避けられる。
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