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急速進行性糸球体腎炎[私の治療]

No.5135 (2022年09月24日発行) P.44

井上 勉 (埼玉医科大学腎臓内科准教授)

岡田浩一 (埼玉医科大学腎臓内科教授)

登録日: 2022-09-25

最終更新日: 2022-09-20

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  • 種々の程度の血尿,顆粒円柱等の病的な円柱を伴い,数週~数カ月の短い期間で腎機能が低下する臨床像を急速進行性糸球体腎炎(症候群)と呼ぶ。原因は多岐に及ぶが,本稿ではanti-neutrophil cytoplasmic antibody(ANCA)あるいは抗glomerular basement membrane(GBM)抗体陽性例を前提に記載する。全身性血管炎の部分症として腎炎が生じている場合は,他臓器(主に肺)の血管炎によって生命が脅かされる場合がある。

    ▶診断のポイント

    特徴的な症候はなく,倦怠感,発熱,体重減少など,非特異的な全身症候で発症するため,急性上気道炎や尿路感染症として初期治療が開始される場合も多い。血液・尿検査を評価する際は,健診等の発症前値と比較する。

    ANCA,抗GBM抗体価が血清学的マーカーとして利用される。Systemic lupus erythematosusに伴う腎症も急速進行性糸球体腎炎となるが,全身症候に先んじて腎症から発症する場合もあり,抗核抗体や補体活性を確認する。

    可能であれば腎生検を行う。肺胞出血や間質性肺炎の併存は稀ではなく,胸部はX線CTでの精査が望まれる。治療前検査として既往にも配慮したB型肝炎ウイルス検査(HBs抗原陰性例では,HBc/HBs抗体を検査する)を行う。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    血清クレアチニンが0.5~1.5mg/dL/週程度上昇する例もあり,腎機能予後・生命予後の観点から,専門医療機関での早期治療介入が望まれる。常に最新の診療ガイドライン1)を参考にする。十分な量の副腎皮質ステロイドの使用が原則であり,可能な限りさらに免疫抑制薬,特にシクロホスファミドかリツキシマブを併用する。加えて,初期治療では全血漿交換も考慮される。

    ニューモシスチス肺炎の予防にST合剤(スルファメトキサゾール・トリメトプリム)またはアトバコン液,消化性潰瘍の予防にヒスタミンH2受容体拮抗薬またはプロトンポンプ阻害薬,必要に応じてステロイド性骨粗鬆症の予防にビスホスホネート系薬剤等を併用する。C-reactive proteinの上昇について感染症の併発が否定できない場合は抗菌薬も開始する。

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