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EPA製剤で出血傾向が生じる理由は?

No.4820 (2016年09月10日発行) P.59

中戸川裕一 (聖隷浜松病院脳神経外科医長)

登録日: 2016-10-12

最終更新日: 2016-10-19

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  • EPA(eicosapentaenoic acid)製剤は,抗血小板作用による出血傾向がみられることがあります。しかし,日常の食生活で魚類などにより同程度か,それ以上のEPAを摂取しても出血傾向は生じません。EPA単独製剤で出血傾向が生じる理由を。

    (質問者:宮崎県 O)


    【回答】

    EPA製剤を用いたJELIS Trialのサブ解析では,EPA製剤摂取の有無による出血性合併症(非外傷性頭蓋内出血,くも膜下出血)には有意差を認めないという結果でした1)

    EPAを食生活で摂取した場合について検討した報告は多くありません。脳出血などの出血性合併症と血小板凝集能や出血時間の変化の2点について説明します。
    過去にグリーンランド・エスキモー人は,心筋梗塞などの血栓性動脈硬化疾患が非常に少なく,出血傾向があると言われていました。それに注目したデンマークのDyerbergとBangがグリーンランド・エスキモー人,デンマーク都市部で生活するエスキモー人とデンマークの白人の3群を対象に検討しました。グリーンランド・エスキモー人の主食は,EPAを豊富に含む魚を餌とする海豹,海馬など海棲の動物肉,および魚肉で,パン,野菜,牛肉や豚肉を摂取していませんでした。その結果,グリーンランド・エスキモー人は平均1日13.7gのn-3系多価不飽和脂肪酸を摂取し,EPA摂取が少ないデンマーク人と比較して,心筋梗塞の発症率が低く,脳出血の割合が高い結果であったとKromannら2)が1980年に報告しています。

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