前置胎盤は子宮口を覆う疾患であり,覆う程度により辺縁,部分,全前置胎盤,に分類されている。頻度はアジア人に多いとされ,日本人ではおよそ5~15/1000人程度である。子宮口は覆わないものの,胎盤辺縁が子宮口に近い場合は低置胎盤と診断する。
前置胎盤は,「胎盤が正常より低い部位の子宮壁に付着し,組織学的内子宮口を覆うかその辺縁が同子宮口にかかる状態」を言う。組織学的内子宮口を覆う程度により,①全前置胎盤,②部分前置胎盤,③辺縁前置胎盤,に分類する。実際の診断は経腟超音波検査で行い,①は組織学的内子宮口を覆う胎盤の辺縁から同子宮口までの最短距離が2cm以上,②は上記距離が2cm未満,③は同距離がほぼ0の状態,にそれぞれ相当する1)。この際計測の注意点として,一断面で2cmを超えているから全前置胎盤と診断すると,誤診の可能性がある。全前置胎盤では,全方位方向にわたり2cm以上胎盤辺縁が組織学的内子宮口より離れている必要があるため,経腟超音波プローブの走査が鍵となる。
診断のポイントは,診断時期と組織学的内子宮口の同定である。前置胎盤の診断は胎盤が完成する妊娠16〜20週以降に行い,遅くとも妊娠31週までには診断を完了させる。
組織学的内子宮口は,経腟超音波により描出される頸管腺組織像の外子宮口からの遠位端として同定するのがよい。頸管腺組織は,通常頸管の筋層と比べややhypoechoicな(熟化したときなどhyperechoicな場合もある)細長い紡錘形の部分として描出される。胎盤辺縁から組織学的内子宮口までの距離が2cm以内の場合を低置胎盤と診断する。
残り1,294文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する