【質問者】
古川大記 名古屋大学医学部附属病院 メディカルITセンター
【選択的肺血管拡張薬有効例の検出が課題だが,吸入薬の有効性にも期待】
肺高血圧症は現在第1~5群に分類されています1)。第1群は肺動脈性肺高血圧症で,肺毛細血管より前の肺動脈が病変の首座となります。膠原病に伴う肺高血圧症も多くはここに分類されます。近年,多くの選択的肺血管拡張薬が使用可能となり,さらに初期併用療法の普及によりわが国における第1群肺動脈性肺高血圧症の治療成績は著明に改善しています2)。
一方,間質性肺疾患(interstitial lung disease:ILD)や慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)などの慢性呼吸器疾患に併発する肺高血圧症は第3群に分類されます1)。第3群肺高血圧の病態は,呼吸器疾患そのものによる肺毛細血管床の減少と換気血流比を維持するために起きる換気不良な部位での肺動脈の攣縮(低酸素性血管攣縮)によると考えられています。したがって,選択的肺血管拡張薬を投与すると低酸素性血管攣縮が解除され,換気血流比が悪化し,かえって状態を悪化させることが多いため,薬剤による治療効果は限定的とされています。過去の臨床試験でも本患者群に対する選択的肺血管拡張薬の有効性はほとんど示されませんでした。
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