腎硬化症は,わが国の透析導入患者の主要原疾患の第2位(18.2%)1)であり,病理学的に良性腎硬化症と悪性腎硬化症とに大別される。良性腎硬化症は慢性的な高血圧の結果として発症し,そのほとんどが無症状である。一方,悪性腎硬化症は高度の高血圧とともに腎障害や心不全を生ずる病態で,迅速な降圧加療を要する。
良性腎硬化症では特異的な自覚症状はなく,緩徐な血清クレアチニン(Cr)の上昇やGFR低下により発見されることが多い。通常,蛋白尿は軽度である(1g/日未満)。悪性腎硬化症では重症高血圧(>230/130mmHg)と全身倦怠感,頭痛,嘔吐,視力障害などの全身症状がみられる。血清Crの上昇,血漿レニン活性およびアルドステロンの上昇,血尿を伴う蛋白尿,眼底検査にて眼底出血や乳頭浮腫を認める。
治療の基本は適切な血圧の管理である。良性腎硬化症では降圧治療は緩徐に行う。降圧は,蛋白尿を認めれば130/80 mmHg未満を,蛋白尿を認めなければ140/90mmHg未満を目標とする2)3)。蛋白尿を有する場合は,糸球体内圧低下作用を期待して,まずレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を考慮するが,蛋白尿を認めなければ,カルシウム(Ca)拮抗薬や利尿薬も含めて目標値の達成を図る。
一方,悪性腎硬化症では,急性期の高血圧緊急症に対しては早急に降圧加療を行う。ただし,急速な降圧による臓器虚血の出現には注意が必要である。病態安定後の治療は良性腎硬化症と同様である。
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