移植後シクロホスファミド(posttransplant cyclophosphamide:PTCy)を用いた移植片対宿主病(graft versus host disease:GVHD)予防は注目度がとても高いですが,施設によってその使用の位置づけが異なると思います。PTCyを用いたヒト白血球抗原(human leukocyte antigen:HLA)半合致移植は第一選択としてよいのでしょうか。また,日常診療でPTCyは血縁のHLA半合致ドナーに使用されていますが,臍帯血や骨髄バンクドナーとの順位づけ,HLA半合致ドナー以外への応用など,PTCyを用いたGVHD予防法をいち早く行ってきた札幌北楡病院・杉田純一先生に,実臨床で使う際のコツについてご解説をお願いします。
【質問者】
後藤秀樹 北海道大学検査・輸血部副部長/ 北海道大学大学院医学研究院血液内科学教室 講師
【PTCyを用いたHLA半合致移植は,HLA適合ドナーが得られない場合の代替ドナーとして標準的位置づけのひとつである】
カルシニューリン阻害薬とメトトレキサートの2剤併用療法は,1990年代から現在に至るまで同種造血幹細胞移植におけるGVHD予防において標準的な位置づけとされてきました1)。しかし,近年は末梢血幹細胞移植やHLA不適合移植など,従来よりもGVHDリスクの高い移植が増加してきており,より強力かつ安全なGVHD予防法の開発が必要とされるようになっています。
PTCyは,HLA半合致移植におけるGVHD予防法として,米国で開発された比較的新しいGVHD予防法のひとつです。HLA適合ドナーが同種移植の第一選択ですが,HLA適合ドナーがすべての患者に得られるわけではありません。HLA半合致ドナーは親子では100%,同胞では50%の確率で得られるため,多くの患者にドナーが得られる可能性がありますが,HLA半合致移植ではHLA適合移植と比べてきわめてGVHDリスクが高いため,これまでは実施が難しく十分には普及していませんでした。
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