めまいの治療で重要な点は,①「生命予後」に関わる病態の有無,②必要な検査と治療,③入院の要否を系統的に判断すること,である。めまい自体の原因は多様であり,「目が回る」「揺れが続く」等の視覚的症状と悪心・嘔吐が共存することで,「不安」という心因要素も併せ持つため,めまい症状の改善は患者の期待度の大きい治療である。
また,これらとは別に「気が遠くなる」「茫然とした」というような眼前暗黒感を表現することもあり,神経耳疾患に限らず,心・循環器系疾患の関与も認知しておく必要がある。
初発か再発,あるいは反復であるか,などの「めまいの特徴」を把握し,患者自身の症状を聴取しながら「客観的」に評価する。患者を診察する中で,症状(悪心・嘔吐)が増悪する動作や体位変換等を強要せずに進めていく。
また,関連性の乏しい症状〔耳鳴り・難聴以外:頭痛,胸部不快感(胸痛/動悸),呼吸苦,腹痛,腰痛など〕,既往歴を含めて確認する。
①回転性:「目が回る」「左右方向に動いて見える」といった錯視体験様症状を訴える。病像は三半規管や耳石器や前庭神経の急性障害で片側性であることがほとんどである。
②浮動性:平衡障害。「ふらつき」「よろめき」といった症状を呈し,中枢神経系(脳幹部・小脳)障害か両側性末梢性障害によるものである。
③失神性:前失神・卒倒感と言われる「気が遠くなる」「立ちくらみ」といった症状を呈する。
これらの三主徴を後述する身体診察と関連させて診断する必要がある。
バイタルサインの変化を経時的に把握する。血圧の異常が継続すること,意識レベル低下は重症度の判定に重要である。
姿勢保持が楽な肢位で診察中に症状が増悪しないように留意して診察を進め,症状増悪を見逃さない。改善を得られず,診察が進まないこともあるので,症状緩和の治療を加えながら進める。
早期に鑑別するために,①平時の血圧と比較して血圧高値の持続(>160~/100~mmHg),②意識障害(傾眠~昏睡まで),③脳血管障害リスク(高血圧,脂質異常症,糖尿病の併存),④平衡機能障害(体幹・四肢):姿勢保持が困難な状況,の有無および,⑤高齢者(脳血管障害リスクの一因)であるかを確認する。
自覚症状:顔面・四肢等のしびれ・違和感,構音(ろれつ)障害,複視,頭痛など。
他覚所見:眼球運動障害,眼振,Horner徴候,構音障害,Barré徴候,失調症状,歩行障害など。
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