代謝性アシドーシスとは,不揮発性の酸(尿から排泄される酸)が体内に蓄積する疾患の総称である。動脈血ガスのpH<7.35で定義される。
糸球体濾過量(glomerular filtration rate:GFR)が減少する慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)に伴う場合が大半だが,腎機能正常な場合には,尿細管性アシドーシス(renal tubular acidosis:RTA)の存在も考慮する。
臨床的には,Cl-の上昇があることでアシドーシスの存在を想定する。理由を以下に述べる。体内では電荷が陰陽同程度であり,陰性荷電であるHCO3-とCl-の和は一定である。この性質を利用してアニオンギャップ(anion gap:AG)という概念が存在する。AG=Na-(HCO3-+Cl-)であり,通常は12±2である。CKDのような不揮発性の酸が尿に排泄しきれずに体内に蓄積する病態では,HCO3-で緩衝するためHCO3-が低下する,その結果としてCl-が上昇する。この場合は「尿は酸性でpH=5~5.5程度であり,動脈血ガス分析ではpHが低下し,AGが14を超えている」はずである。腎機能正常でCl-が高い場合にはRTAの存在を考える。
この病気の本質は尿中への酸の排泄障害であるため,尿のpHは6以上となる。しかも,不揮発性の酸が増えているわけではないため,AGは正常範囲である。診断のコツは,①Cl-の増加で代謝性アシドーシスを想定する,②尿のpHを確認する,③動脈血ガス分析でpHを確認する,④AGが開大していないか,でRTAかどうかを判断することになる。RTAが疑われた場合には,シェーグレン症候群などの背景疾患がないかどうかの検索を行う。
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