1 男性更年期障害とは
・高齢社会の到来に伴い,1990年代後半頃から,中高年男性ではテストステロン値が低下することに関心が持たれた。
・男性においても中高年期に,女性の更年期障害と似た症状を呈することから,男性更年期を意味する“PADAM(partial androgen deficiency of the aging male)”や“LOH(late-onset hypogonadism)”といった言葉が登場した。
・様々なエビデンスが蓄積され,2022年には『男性の性腺機能低下症ガイドライン2022』『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』が刊行された。
2 男性更年期障害の診断
・2022年に刊行された『LOH症候群(加齢男性・性腺機能低下症)診療の手引き』では,前回の2007年版から診断基準が変更された。
・2022年版の診断基準のポイントは,①男性更年期症状を主とする,②総テストステロン値250ng/dL未満または遊離型テストステロン値7.5pg/mL未満,③テストステロン補充療法はテストステロン値にこだわらない。
3 テストステロン補充療法の実際
・テストステロン補充療法の適応は,男性更年期症状を有する40歳以上の男性。リスクとベネフィットをよく考え,治療にあたることが大事。
・アンドロゲン依存性悪性腫瘍(前立腺癌や男性乳癌)の患者は禁忌。
・注意事項は以下の8点。PSA高値,うっ血性心不全,多血症,前立腺肥大症,骨転移を有する悪性腫瘍,ワルファリン内服中,睡眠時無呼吸症候群,挙児希望。
・わが国で使用が可能な薬剤は,テストステロンエナント酸エステル,男性ホルモンクリーム剤,ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(ヒト絨毛性ゴナドトロピン),クロミフェン,PDE5阻害薬。
・テストステロン補充療法の効果については,骨,筋肉,脂肪,血糖コントロール,抑うつ,勃起機能,下部尿路症状,健康関連QOLに関して有効性の報告がある,または改善の可能性がある。
・テストステロン補充療法の副作用については,心血管系への影響,多血症,睡眠時無呼吸症候群,造精機能障害,肝機能障害,女性化乳房,皮膚障害についての注意が必要。
<編集部より>
本特集は,Webコンテンツ「プライマリケア医が知っておきたい男性更年期障害の診かた」を再構成しました。本特集に掲載していない「男性更年期障害の病態」「テストステロン補充療法以外の治療法」については,Webコンテンツをご覧ください。