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特集:コロナ禍での鑑別困難な咳嗽・喘息・肺炎の診かた

No.5158 (2023年03月04日発行) P.18

田中裕士 (札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター理事長)

登録日: 2023-03-03

最終更新日: 2023-03-02

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1983年に札幌医科大学を卒業し,同大呼吸器アレルギー内科に入局。2007年より同大准教授を務め,2011年に医大前南4条内科院長に就任。2012年よりNPO法人札幌せき・ぜんそく・アレルギーセンター理事長も務める。著書に『プライマリ・ケアの現場でもう困らない! 止まらない“せき”の診かた』(南江堂)ほか。

1 コロナ禍での急性咳嗽(3週間以内持続)への対応
・発熱の有無にかかわらず,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染を検索
・インフルエンザ流行期には,同時抗原検査・PCR検査
→感染あり:オミクロン株ではデルタ株より急性咳嗽が多く,肺炎は少ない COVID-19感染の咳嗽には麻薬性鎮咳薬+漢方薬など
→感染なし:他の呼吸器ウイルス,細菌をFilmArray®呼吸器パネルや抗原検査で検索
早朝3~5時に咳嗽で目が覚める場合,喘息の急性増悪を疑う
咽頭違和感がある場合,アレルギー性鼻炎または胃食道逆流症(GERD)による咳嗽を疑う

2 コロナ禍での遷延性(3~8週間),慢性咳嗽(8週間以上)への対応
・COVID-19感染がありlong COVIDと考えられる場合
→デルタ株では肺炎が遷延化
→感染をきっかけに基礎疾患の喘息,アレルギー性鼻炎が悪化
→オミクロン株では特に鼻炎(後鼻漏),気管支炎の合併が多い
・COVID-19感染がない場合
→図4を参考に咳嗽の好発時間,喀痰の有無で疾患を絞り込む

3 コロナ禍で急性肺炎を診たら
コロナ禍ではマイコプラズマ肺炎,クラミジア肺炎,百日咳,インフルエンザなどのエアロゾルによる感染症が減ったが,COVID-19との同時感染の可能性を常に念頭に置く。RSウイルス感染は,小児では変わらず存在。
喘息悪化に伴う好酸球性肺炎,間質性肺炎,過敏性肺炎などの非感染性の両側びまん性陰影を呈する疾患の鑑別も重要。
(1)COVID-19肺炎の特徴
初期は,両側びまん性にすりガラス陰影がある。分布は区域性ではなく,両側性辺縁部や中枢末梢領域にも認められ,円形のすりガラス陰影となる。胸水,リンパ節腫脹,気管支壁の肥厚は稀。
・増悪例:consolidationを伴い,急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を思わせる陰影
・軽快例:すりガラス陰影はしだいに淡くなり,肺野の一部が虚脱し器質化して線状陰影となり,範囲の狭い部分無気肺になる
(2)COVID-19肺炎と鑑別する疾患と鑑別のポイント
❶ライノウイルス,インフルエンザウイルス,RSウイルスなどの呼吸器ウイルスによる肺炎
・各種抗原検査,またはFilmArray®呼吸器パネル2.1(PCR)で診断
❷マイコプラズマ肺炎
・CT像での気管支壁の肥厚と小葉中心性粒状陰影,含気減少を伴うconsolidation,淡い肺野濃度の上昇
・PCRでマクロライド耐性まで判定可能なキットあり
❸過敏性肺炎
・CT像で小葉単位でのモザイク状の肺野濃度の変化,血中SP-D,KL-6上昇
❹好酸球性肺炎
・CT像で中枢,末梢に関係なく,気管支の走行に関係ない淡い肺野濃度の上昇
・血中好酸球数の上昇,呼気中一酸化窒素の上昇,基礎疾患に喘息が多い
❺間質性肺炎
・聴診で背側にfine crackle聴取,CTで間質性陰影,血中SP-D,KL-6上昇

伝えたいこと…
COVID-19流行下では,この感染症を否定するために,疑ったときにはPCRまたは抗原検査を行う。発熱のない場合もあり,注意が必要。咳嗽を伴う場合には,COVID-19感染を契機に生じる基礎疾患の喘息,アレルギー性鼻炎の増悪による咳嗽も考慮。肺炎の鑑別にCTは必須。

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