慢性腎臓病(CKD)(±糖尿病)に対するSGLT2阻害薬の進展抑制作用は、DAPA-CKD、EMPA-KIDNEYという2つの大規模ランダム化比較試験で示されている。一方、その機序は必ずしも明らかではない。
一般的にはレニン・アンジオテンシン系阻害薬(RAS-i)と同様に「糸球体内圧低下による過剰濾過」を改善していると考えられているものの、CANVAS試験の後付解析では(糸球体内圧が上昇しているとは考えにくい)「尿中アルブミン/クレアチニン比<30mg/gCr」のCKD例でも、SGLT2阻害薬による腎保護作用が観察されている[Neuen BL, et al. 2019]。すなわち、糸球体過剰濾過改善以外の機序も関与している可能性がある。
その1つとして提唱されているのが、SGLT2阻害薬による尿酸(UA)低下だ。背景には、UA高値が腎機能低下の予知因子であると報告する健常者対象の観察研究[Bellomo G, et al. 2010]などがある。またSGLT2阻害薬は「2型糖尿病」例におけるUA低下作用が、ランダム化比較試験メタ解析から報告されている[Hu X, et al. 2022]。
ではSGLT2阻害薬は「日本人CKD」例(±糖尿病)のUA値にどのような影響を及ぼすのか、そしてその機序は? 岩田幸真氏(堺市立総合医療センター)らによる検討 が3月24日付でSci Rep誌ウェブサイトに掲出された。紹介したい。
同氏らが解析対象としたのは、SGLT2阻害薬(ダパグリフロジン10mg/日)新規処方のステージ3以上CKD中、観察開始時と観察終了時にUA値が評価されていた日本人75例である。観察期間が2週間未満の例は除外されている。
年齢中央値は67歳、72.0%が男性で30.7%が糖尿病を合併していた。推算糸球体濾過率(eGFR)中央値は35.7mL/分/1.73m2で、70.7%がRAS-iを服用していた。UA中央値は6.4mg/dLである。
その結果、SGLT2阻害薬服用開始後、UA値は服用前の6.4mg/dLから5.6mg/dLへ有意に低下した。
また服用開始前後で尿中UA排泄率(FEUA)が評価されていた35例での検討では、SGLT2阻害薬服用開始後、FEUAは有意上昇を認めた。
ただしFEUAの増加とUA値低下の間に有意な相関はなかった。そのためSGLT2阻害薬服用に伴うUA値低下にはUA尿中排泄増加以外の機序が関与している可能性を、岩田氏らは想定しているようだ。
なお、SGLT2阻害薬服用後のUA値低下とFEUA増加は、非糖尿病CKDのみで解析しても同様に観察された。
本研究には開示すべき利益相反はないという。