【質問者】山上明子 井上眼科病院
【SESは遠見内斜視and/or微小上下斜視を呈し,プリズム眼鏡もしくは斜視手術で治療する】
SESは2009年に米国のRutarとDemerによって報告された比較的新しい疾患概念1)であり,眼周囲の支持靱帯である眼窩プリーの加齢性変化によって発生し,複視を呈する後天斜視です1)。
眼窩プリーは,眼球赤道部でテノン囊内に存在し,眼窩壁に懸垂する状態で,眼周囲を取り囲むように存在します。眼窩プリーを中心に外眼筋は屈曲し,機能的起始部として働き,さらに外眼筋の位置ずれを防いでいます2)3)。眼窩プリーが障害されると,眼球運動は制限され斜視を呈します。特に,外直筋(LR)プリーとLRと上直筋(SR)を繋ぎ合わせる靱帯であるLR-SRバンドは,コラーゲンが多いため加齢の影響を受けやすく3),LRプリーとLR-SRバンドが障害されるとSESが発症します。SESは加齢とともに増加し,やや女性に有意に発症します4)。
SESはわが国の60歳以上,米国・韓国の40歳以上の後天斜視の原因第1位であり,後天斜視の18~31%と報告されています4)~6)。眼窩プリーの障害程度が左右同等であれば,開散麻痺様内斜視(近見斜位・遠見内斜視)を,左右差があれば微小上下斜視を呈します1)7)。SESは眼窩の変化のみでなく,さらにその周りの眼周囲の変化を呈します。
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