流産とは,妊娠22週未満の妊娠の中絶を言う。流産が自然に起こるものを自然流産,人為的に行われるものを人工流産と呼ぶ。また,妊娠12週未満の流産を早期流産,妊娠12週以降の流産を後期流産と呼ぶ1)。自然流産の約90%が早期流産である。臨床的に確認された妊娠の約15%が流産に至り,母体年齢の高齢化に伴いその頻度が高くなる。流産の約70%は胎児側の染色体異常に起因する一方,後期流産では頸管無力症や子宮内感染が主原因となる。妊娠は成立するが,流産や死産を繰り返して生児が得られない状態を不育症と呼ぶ。
排卵日や胚移植日など,問診や臨床情報から妊娠数の正確な把握に努める。正常の妊娠経過であれば,妊娠4週に尿定性検査で妊娠反応が陽性となり,経腟超音波検査にて妊娠5週前半に胎囊・卵黄囊が,妊娠6週に胎芽・胎児心拍が順次観察される。
妊娠5週に胎囊を認めない場合には,異所性妊娠の可能性も念頭に置いて週に1~2回の頻度で診察する。胎芽・胎児心拍が確認できない場合には1~2週間程度の間隔で診察し,変化がなければ稽留流産と診断する。
欧米のガイドラインは,①胎囊径≧25mmで胎芽がみられない場合,②胎児頭殿長≧7mmで胎児心拍を認めない場合,③胎囊確認(卵黄囊なし)から2週間経過し胎児心拍を認めない場合,④胎囊・卵黄囊確認から11日間経過して胎児心拍を認めない場合,を稽留流産の判断基準として提示している。
胎児心拍確認後に流産に至る場合もあり,母体年齢とともに頻度が高まる。経過中に出血や腹痛を伴う場合は進行流産,子宮内容が完全に排出されれば完全流産,一部子宮内にとどまっている場合を不全流産と診断する。2回目以上の流産においては,流産絨毛染色体検査を提出し,後日に不育症のスクリーニング精査を行う。
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