血尿の治療は原因別に行われるので,原因を特定することが重要である。尿路悪性腫瘍のリスクを評価し,泌尿器科に紹介する。当日の救急外来で精査を完結する必要はない。
本稿では触れないが,外傷,腎損傷,血管障害,腎梗塞を念頭に病歴を聴取する。
尿路感染症を示唆する病歴であった場合,または腰痛を訴えている場合には,まず感染症,または尿管結石の有無を確認し,抗凝固薬内服の有無,最近激しい運動をしたかも確認する。膀胱癌患者の約80%に排尿障害が認められ,排尿障害が認められる場合には膀胱癌の可能性が2倍に増加するので,排尿障害について聴取する。喫煙歴は尿路悪性腫瘍のリスク因子である。尿路感染症(全年齢),尿管結石(>20歳),悪性腫瘍(>50歳),前立腺肥大症(>40歳),糸球体腎炎(小児〜若年者)など,頻度の高い疾患とその好発年齢を念頭に病歴聴取を行う。なお,年齢とともに膀胱癌のリスクは上がる。
糸球体疾患(IgA腎症,アルポート症候群など),腎結石,前立腺肥大症など,尿路悪性腫瘍以外の原因であることが多い。
なお,抗凝固薬や抗血小板薬内服患者であっても,尿路悪性腫瘍の評価は同様に行うべきであるとされている。
肉眼的血尿の場合には出血性ショックを,尿路感染症は敗血症性ショックをきたしうることに留意する。
肋骨脊柱角叩打痛(CVA tenderness)や恥骨上の圧痛は尿管結石や尿路感染症を示唆する所見である。直腸診で前立腺の圧痛があれば前立腺炎を,腫瘤を触知すれば前立腺癌を疑う。女性では性器出血ではないことを確認する。
原因が尿管結石であれば鎮痛,尿路感染症であれば抗菌薬治療を行う。尿道カテーテル留置中の肉眼的血尿患者で凝血塊による閉塞が危惧される場合には膀胱洗浄を行う。
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