【概要】厚労省は17日、臨床研究の規制のあり方を議論する「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」の初会合を開催。法規制の必要性を提言するかが注目される。
委員には、医師、法律家、生物統計家、薬剤師、患者代表の有識者が選ばれた。
●臨床研究の疑義が相次ぐ
検討会の設置は、ノバルティスファーマが販売するバルサルタン(商品名=ディオバン)の臨床研究で研究データの改竄が明らかとなった問題を受けて設置されたもの。現在、日本の臨床研究を規制する法律はなく、厚労省告示の『臨床研究に関する倫理指針』があるのみ。一方、薬事承認を目的とする治験では、薬事法に基づき規制や罰則が設けられている。
検討会では今後、(1)臨床研究の質の確保、(2)被験者の保護、(3)製薬企業等の資金提供・労務提供にあたっての透明性確保、実施機関における利益相反─などについて検討し、法規制を含めた規制のあり方について今秋に結論をまとめる。
なお、バルサルタンの論文不正問題に関しては、厚労省は今年1月、誇大広告を禁止する薬事法違反の疑いでノバ社を刑事告発した。臨床研究を巡ってはほかにも、白血病治療薬のSIGN試験、降圧薬のCASE-J試験、アルツハイマー病のバイオマーカー確立を目的としたJ-ADNI試験について疑義が指摘されており、関係機関が現在、事実調査を実施している。
●座長「これまで性善説を前提としていた」
17日の初会合では、遠藤久夫座長が「臨床研究はこれまで性善説を前提としてきたが、最近の不祥事の多発は、臨床研究の枠組みの見直しを迫っている」と指摘。その上で、「過剰な規制は研究の自由度を低下させてしまうので、国民の利益を向上させるためにどのような規制が適切なのかは大変難しい課題だが、道筋をつけたい」と話した。
委員の意見交換では、「研究データの信頼性を確認する仕組みが必要」「研究倫理の教育が大事」「大学の倫理委員会が機能するための後押しが必要」「製薬企業の資金提供が悪いのではなく、透明性の確保が重要」などの意見が出た。
検討会では次回以降、諸外国の臨床研究の規制について調査するほか、日本学術会議や日本製薬工業協会など臨床研究の関係者からヒアリングを行い、議論を進めていく予定。
【記者の眼】規制強化が臨床研究の停滞につながってはいけない。しかし、バルサルタンの臨床研究では、目的が医学的な課題解明ではなく、教室の関係者の結束強化だったことが明らかになっている。そのような研究が淘汰され、患者利益につながる臨床研究が適正に進むための規制が必要だ。(N)