【質問者】井上 勉 埼玉医科大学腎臓内科教授
【体制面の課題があるが,種々の提言や資材開発を通じて啓発が進められている】
小児期発症腎疾患の予後の改善に伴い,成人への移行期医療が必要な患者が増加しています。移行期医療では単に疾患の治療やコントロールをするだけでなく,患者が自立して本来の能力を発揮し,最大限のQOLが得られることが最大の課題です。
小児腎疾患領域では,2011年に国際腎臓学会と国際小児腎臓学会より腎疾患患者の移行期医療に関するステートメントが報告されました1)。わが国では日本腎臓学会と日本小児腎臓病学会により「小児慢性腎臓病患者における移行医療についての提言」(2015年3月),「思春期・青年期の患者のためのCKD診療ガイド」(2016年10月)が出版され,小児期発症腎疾患の移行期医療の啓発が進められています。
わが国の腎疾患の移行期医療に関する全国調査では,対象疾患としてIgA腎症,微小変化型ネフローゼ症候群,先天性腎尿路異常(congenital a- nomalies of the kidney and urinary tract:CAK UT)が多くみられました。小児科でフォローされている20歳以上の患者のうち,43.3%が25歳以上であり,高年齢まで小児科でフォローされている例が多いことが示されました。また,成人診療科を受診した小児期発症腎疾患患者のうち,60%が小児科の受診を中断しており,成人診療科を受診した理由の25%が何らかの症状の出現でした2)。
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