健常人の0.09~0.3%程度に発生する。無症状のことがほとんどであり,他疾患の検索目的の画像検査で偶発的にみつかることが多い。女性にやや多い。破裂の割合は全体の3~5%程度とされている。
腎動脈瘤の発生部位,形状などにより治療方針が変わるため,診断のゴールドスタンダードは,ダイナミック造影CTである。CT angiographyの精度が向上しており,3D再構築画像を作成可能である。かつて行われていた血管造影はほとんど行われなくなってきている。
ヨードアレルギーなどで造影CTが困難な場合は,MR angiographyなどを考慮する。基本的な治療適応は3cm以上で瘤壁が完全石灰化していない場合である。ただし,瘤径が小さくても腎血流障害を伴う場合や,将来妊娠・出産を予定している場合,感染を伴う場合などは,治療を検討する必要がある。大きいものであっても瘤壁が完全石灰化している場合は,治療適応にはならない。腎動脈瘤は形状により囊状(saccular type),紡錘状(fusiform type),解離性(dissecting type),の3タイプにわけられる。腎動脈瘤の発生部位,形状により治療方針が変わる。
一手目 :降圧療法
破裂の危険性を減らすために,高血圧がある患者には,まずは降圧療法を行う。薬剤は高血圧治療に準じて,カルシウム拮抗薬などから開始する。
二手目 :〈一手目に追加〉塞栓術(血管内治療)
囊状動脈瘤がよい適応である。ただし,裾野が広い動脈瘤などでは,塞栓が困難な場合がある。また,動脈瘤から腎臓へ出ていく分枝(efferent branch)がないことをCT angiographyで十分に確認しておく必要がある。手技に際しては,熟練した放射線IVR医に依頼する。紡錘状動脈瘤や解離性動脈瘤は,適応外である。
三手目 :〈治療変更〉手術
紡錘状動脈瘤,解離性動脈瘤や複雑な形状の動脈瘤が適応である。文献によれば,腎動脈瘤の72%は手術療法で加療されていた1)。手術は,上腹部正中切開もしくは横切開が選択されることが多い。手術は瘤の位置,大きさ,形状などにより単純縫縮術,切除+血管形成,結紮+バイパス,体外切除+自家腎移植など,様々なオプションがある。
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