罹患歴の短い2型糖尿病(DM)では短期のインスリン治療により、約6~4割で3~24カ月間のDM「寛解」が得られるという[Kramer CK, et al. 2013]。しかしどのような例で寛解の可能性が高いのかについては必ずしも見解は一致していない。
この点に関し、6月23日から米国サンディエゴで開催された米国糖尿病学会(ADA)第83回学術集会では、ランダム化比較試験"PREVAIL"データの後付解析から、インスリン治療開始時の「β細胞機能」のみが「寛解」の有無と相関するとのデータが示された。報告者はカナダ・トロント大学のRavi Retnakaran氏である。
PREVAIL試験の対象は、「糖尿病罹患期間が7年未満」で「3剤以上の血糖降下薬を服用していない」30歳以上のカナダ在住2型DM 90例。インスリン、GLP-1受容体作動薬(GLP-1-RA)使用例は除外されている。
これら90例は基礎インスリン群、基礎・追加インスリン療法群、基礎インスリン・GLP-1-RA群にランダム化され8週間加療・中止12週間経過後、糖代謝諸項目が評価された。
今回評価されたのは治療中止12週間後の「2型DM寛解」である。寛解の定義は「あらゆるDM治療薬中止下で『HbA1c<6.5%』が3カ月以上持続」とされた。
90例は割り付け群を問わず「早期インスリン治療」例として扱われた。
その結果、31例(34%)で「寛解」が得られた。
背景因子を「非寛解」群と比較すると、年齢、性別、罹病期間、試験前DM治療薬数、BMI、腹囲径のいずれにも、有意な群間差はなかった。なおBMI平均値は「寛解」群:30.7kg/m2、「非寛解」群:32.0kg/m2である。
また上記3治療群の占める割合も、両群で同等だった。
一方、試験開始時の「β細胞機能」は「寛解」群で有意に高かった(ISSI-2など4つの指標で評価)。
対照的にインスリン感受性/抵抗性の指標には、両群間に差を認めなかった(HOMA-IRは「寛解」群:3.8、「非寛解」群:4.2[P=0.49]。Matsuda Indexにも有意差なし)。
次に「寛解」の予知因子を多変量解析(ロジスティック回帰分析)で探ると、「β細胞機能」諸指標のみが残った(指標高値で「寛解」オッズ比も有意高値)。
一方、「年齢」「罹病期間」「BMI」「試験前使用DM治療薬数」は有意な因子とはならなかった。
従来、短期インスリン療法後2型DM「寛解」の可能性が高いとされてきた「若年」や「短罹患期間」「少DM治療薬数」などはおそらく、良好なβ細胞機能を反映する指標だろうとRetnakaran氏は考察していた。
これらより同氏は、短期インスリン治療による2型DM寛解を目指すのであれば、β細胞機能がある程度残存している時期から開始すべきだと結論している。
なお質疑応答では、本解析で用いられた「寛解」の定義に対して疑問が投げかけられた。
すなわち血糖降下治療中止後「3カ月間」という短期間で判断して良いか、また「HbA1c<6.5%」を「寛解」の基準として良いかという問いである(ADA基準でHbA1c「5.7–6.4%」はPreDM)。
確かに、今回の検討では34%で「寛解」が得られたとされたが、カプランマイヤー曲線を見ると治療中止100日後まで「HbA1c<6.5%」が維持されていたのは、β細胞機能の高低を問わず20%前後のみだった。
PREVAIL試験は製薬会社以外から資金提供を受け実施された。