心房細動(AF)例が脳梗塞を来すと、まずは心原性塞栓症が想起される。しかし抗凝固薬(OAC)服用下で脳梗塞を発症したAF例ではOAC継続後も高い再発率が報告されており[Seiffge DJ, et al. 2020]、心原性塞栓症以外の病型潜在が示唆されていた。
European Stroke Journal誌に7月4日、この点を細かく解析したスイスからの観察研究が掲載された。AF例であっても初発脳梗塞が心原性と断定できるのは80%で、再発リスクはアテローム血栓性を除外できない例で高いという結果だった。スイス・バーゼル大学のAnnaelle Zietz氏らによる報告を紹介する。
今回解析対象となったのは、スイスの脳卒中レジストリ"NOACISP-LONGTERM"に登録された、直近3カ月以内に脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)既往を持つ非弁膜症性AF 1060例中、TOAST分類で脳梗塞病型の明らかだった907例である。
年齢中央値は81歳、54.4%が男性だった。
これら907例で、初発脳梗塞の病型分布を明らかにし、さらにその後の脳梗塞再発率と再発における病型分布を調べた。
まず、脳梗塞初発を「心原性」と断定できたのは79.7%である。残り20.3%はその他病型を除外できなかった(competing stroke etiologies)。
中央値2.01年の観察期間中、7.8%が脳梗塞を再発した。初発病型別に比較すると、初発が心原性塞栓症だった群に比べ、アテローム血栓性を除外できなかった群の再発ハザード比(HR)は諸因子補正後も2.96(95%信頼区間[CI]:1.65-5.35)の有意高値だった。
一方、ラクナ梗塞を除外できなかった例の再発リスクは、心原性塞栓症確定例と変わらなかった。
また脳梗塞再発71例中、病型が明らかだった70例で検討すると、再発例で最も多かった病型は心原性塞栓症だがその割合は64.8%、続いてアテローム血栓性の19.7%だった。
なお初発「心原性塞栓症」における再発の21.3%が他病型を示し、8.5%はアテローム血栓性だった。
Zietz氏らは「初発脳梗塞例でAF以外に除外できない病型があれば、それらの病型を対象とした介入も加えることで脳梗塞再発が減るかもしれない」と考察している。
なお6月15日には、AF例へのスタチン追加により脳梗塞が有意減少するというカナダからの観察研究がJAHA誌に報告されている(拙稿紹介記事)。
本研究はSwiss Heart FoundationとBasel Stroke Funds、参加2病院からの資金提供を受けた。