株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【文献 pick up】心房細動例の初発脳梗塞における心原性塞栓症の割合は? そして病型別の再発リスクは? ― Eur Stroke J誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-07-20

最終更新日: 2023-07-20

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

心房細動(AF)例が脳梗塞を来すと、まずは心原性塞栓症が想起される。しかし抗凝固薬(OAC)服用下で脳梗塞を発症したAF例ではOAC継続後も高い再発率が報告されており[Seiffge DJ, et al. 2020、心原性塞栓症以外の病型潜在が示唆されていた。

European Stroke Journal誌に7月4日、この点を細かく解析したスイスからの観察研究が掲載された。AF例であっても初発脳梗塞が心原性と断定できるのは80%で、再発リスクはアテローム血栓性を除外できない例で高いという結果だった。スイス・バーゼル大学のAnnaelle Zietz氏らによる報告を紹介する。

今回解析対象となったのは、スイスの脳卒中レジストリ"NOACISP-LONGTERM"に登録された、直近3カ月以内に脳梗塞か一過性脳虚血発作(TIA)既往を持つ非弁膜症性AF 1060例中、TOAST分類で脳梗塞病型の明らかだった907例である。

年齢中央値は81歳、54.4%が男性だった。

これら907例で、初発脳梗塞の病型分布を明らかにし、さらにその後の脳梗塞再発率と再発における病型分布を調べた。

まず、脳梗塞初発を「心原性」と断定できたのは79.7%である。残り20.3%はその他病型を除外できなかった(competing stroke etiologies)。

中央値2.01年の観察期間中、7.8%が脳梗塞を再発した。初発病型別に比較すると、初発が心原性塞栓症だった群に比べ、アテローム血栓性を除外できなかった群の再発ハザード比(HR)は諸因子補正後も2.9695%信頼区間[CI]1.655.35)の有意高値だった。

一方、ラクナ梗塞を除外できなかった例の再発リスクは、心原性塞栓症確定例と変わらなかった。

また脳梗塞再発71例中、病型が明らかだった70例で検討すると、再発例で最も多かった病型は心原性塞栓症だがその割合は64.8%、続いてアテローム血栓性の19.7%だった。

なお初発「心原性塞栓症」における再発の21.3%が他病型を示し、8.5%はアテローム血栓性だった。

Zietz氏らは「初発脳梗塞例でAF以外に除外できない病型があれば、それらの病型を対象とした介入も加えることで脳梗塞再発が減るかもしれない」と考察している。

なお6月15日には、AF例へのスタチン追加により脳梗塞が有意減少するというカナダからの観察研究がJAHA誌に報告されている(拙稿紹介記事)。

本研究はSwiss Heart FoundationBasel Stroke Funds、参加2病院からの資金提供を受けた。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

もっと見る

関連求人情報

公立小浜温泉病院

勤務形態: 常勤
募集科目: 消化器内科 2名、呼吸器内科・循環器内科・腎臓内科(泌尿器科)・消化器外科 各1名
勤務地: 長崎県雲仙市

公立小浜温泉病院は、国より移譲を受けて、雲仙市と南島原市で組織する雲仙・南島原保健組合(一部事務組合)が開設する公設民営病院です。
現在、指定管理者制度により医療法人社団 苑田会様へ病院の管理運営を行っていただいております。
2020年3月に新築移転し、2021年4月に病院名を公立新小浜病院から「公立小浜温泉病院」に変更しました。
6階建で波穏やかな橘湾の眺望を望むデイルームを配置し、夕日が橘湾に沈む様子はすばらしいロケーションとなっております。

当病院は島原半島の二次救急医療中核病院として地域医療を支える充実した病院を目指し、BCR等手術室の整備を行いました。医療から介護までの医療設備等環境は整いました。
2022年4月1日より脳神経外科及び一般外科医の先生に常勤医師として勤務していただくことになりました。消化器内科医、呼吸器内科医、循環器内科医及び外科部門で消化器外科医、整形外科医の先生に常勤医師として勤務していただき地域に信頼される病院を目指し歩んでいただける先生をお待ちしております。
又、地域から強い要望がありました透析業務を2020年4月から開始いたしました。透析数25床の能力を有しています。15床から開始いたしましたが、近隣から増床の要望がありお応えしたいと考えますが、そのためには腎臓内科(泌尿器科)医の先生の勤務が必要不可欠です。お待ちいたしております。

●人口(島原半島二次医療圏の雲仙市、南島原市、島原市):126,764人(令和2年国勢調査)
今後はさらに、少子高齢化に対応した訪問看護、訪問介護、訪問診療体制が求められています。又、地域の特色を生かした温泉療法(古くから湯治場として有名で、泉質は塩泉で温泉熱量は日本一)を取り入れてリハビリ療法を充実させた病院を構築していきたいと考えています。

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top