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現代の救急医療における漢方の役割は?

No.5180 (2023年08月05日発行) P.47

山口英明 (小児東洋医学会理事長)

加島雅之 (熊本赤十字病院総合内科)

登録日: 2023-08-07

最終更新日: 2023-08-02

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  • 現代の救急医療における漢方の役割はどのようなものでしょうか。
    一般的に漢方薬は慢性疾患に対して徐々に効果を発揮するとの印象があるようですが,歴史的には急性・救急医療が主な目的であったと思います。そこで,救急医療体制の整った大病院で漢方医療を実践してこられた熊本赤十字病院・加島雅之先生に,救急医療における漢方の現代的役割についてご教示頂きたいと思います。

    【質問者】山口英明 小児東洋医学会理事長


    【回答】

     【急性期症状の緩和と,回復過程の促進に役立つ】

    近代化以前は漢方は正統な医学であったため,当然,救急医療を担ってきました。このため,様々な治療法が開発されてきました。西洋医学の治療法は一般に,細菌感染症治療の抗菌薬や,手術療法による病巣の切除に代表される病原体の駆逐と,手術療法による解剖学的再建,輸液・循環作動薬・酸素投与による支持療法に優れており,救急医療の主軸であることに議論の余地はありません。

    一方で西洋医学では,特に生体側の機能を調整する方法は乏しく,抗炎症療法におけるステロイドなど,生体の反応機序を停止するような極端なものがほとんどです。漢方には,急性感染症に対して,麻黄湯や葛根湯などの非特異的な抗ウイルス活性を持つと同時に様々な症状を緩和させる処方や,小柴胡湯などの炎症の微調整,桃核承気湯などの微小循環障害の調整とともに様々な症状を緩和できる処方も数多く存在します。このほど中国では,重症肺炎,敗血症に対して,XueBiJing(血必浄)という微小循環障害改善の効果が期待できる生薬製剤が効果を示したRCTが発表されています。

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