落屑緑内障は,水晶体,瞳孔縁,線維柱帯などに白色の線維性物質が沈着する落屑症候群に伴う続発緑内障の一種である。中高年における発症で,年齢とともに有病率が高くなる。落屑症候群は,緑内障のほかに散瞳不良と毛様小帯の脆弱性を呈することがあり,白内障手術時には注意が必要である。遺伝的背景や環境要因が発症に関連していることがわかっているが,完全には解明されていない。眼圧上昇機序として,一般的には房水流出路に落屑物質が沈着する開放隅角の病態であることが多い。ただし,毛様小帯の脆弱性に伴い水晶体が前方移動することによって,閉塞隅角の病態をとることがある点に注意が必要である。
高眼圧に加え水晶体や瞳孔縁に特徴的な白色の線維性物質の沈着を認めれば,診断は比較的容易である。ただし,初期は散瞳して確認しないと周辺部の水晶体所見を見逃すことがある。
基本的な治療方針は原発開放隅角緑内障と同じであるが,落屑症候群の存在は緑内障進行の危険因子であることから,より積極的な眼圧下降治療が求められる。すなわち,より低い目標眼圧を設定し,早めに次の手を打つ必要がある。眼圧下降治療薬の選択は,効果が強いプロスタノイド受容体作動薬,交感神経β受容体遮断薬を軸に考える。多剤併用となる場合は,配合薬を積極的に採用するとともに,低侵襲であるレーザー線維柱帯形成術や線維柱帯切開術も検討する。
まずは開放隅角の病態なのか,閉塞隅角の病態なのかを正しく診断する。薬剤の選択にあたっては,基本的には高齢者の疾患であるので,その点に留意した禁忌をチェックする。プロスタノイド受容体作動薬は禁忌が少ないが,眼瞼皮膚の色素沈着や上眼瞼溝深化など外見上の副作用が認容できない場合がある。また,エイベリスⓇ(オミデネパグ イソプロピル)は他のプロスタノイド受容体作動薬とレセプターが異なるため,美容上の副作用がきわめて少ない点が有利である一方で,白内障手術後とタプロスⓇ(タフルプロスト)との併用が禁忌である点に注意が必要である。他の緑内障点眼薬との併用も慎重に行う。交感神経β受容体遮断薬は,気管支喘息,気管支痙攣,重篤な慢性閉塞性肺疾患,コントロール不十分な心不全,洞性徐脈,房室ブロック(Ⅱ,Ⅲ度),心原性ショックでは禁忌である。炭酸脱水酵素阻害薬は,重篤な腎障害では禁忌とされている。
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