重篤な全身症状を伴う薬疹で,時に致死的な経過をたどる。スティーブンス・ジョンソン症候群(Stevens-Johnson syndrome:SJS),中毒性表皮壊死症(toxic epidermal necrolysis:TEN),薬剤性過敏症症候群(drug-induced hypersensitivity syndrome:DIHS)が代表的疾患である。SJS/TENは,高熱や全身倦怠感を伴い,口唇・ロ腔内・眼・外陰部を含む全身に紅斑・びらん・水疱が多発し,表皮の壊死性障害を生じる薬疹である。DIHSは,抗痙攣薬などの限られた薬剤投与により遅発性に発症し,発熱,リンパ節腫脹,肝・腎障害などの臓器障害を伴う薬疹である。経過中にヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)やサイトメガロウイルス(CMV)の再活性化がみられ,薬剤アレルギーとウイルス感染症が複合して病態を形成する。
急速に紅斑が全身に拡大し,発熱,全身倦怠感を伴うことが多い。SJS/TENでは,紅斑に水疱・びらんを伴い,粘膜疹を認める。わが国では水疱,びらんなどの表皮剝離が体表面積の10%未満のものをSJS,10%以上のものをTENと定義している。一方,DIHSでは全身の紅斑に加え,リンパ節腫脹,発熱,異型リンパ球の出現,好酸球増多,肝・腎障害などの臓器障害を認め,原因薬剤中止後も,しばしば皮疹や臓器障害が遷延する。診断にあたってはSJS/TEN,DIHSともに診断基準を参照する。
まず,薬歴から被疑薬を推測し中止する。既感作の場合は薬剤投与1~2日までに発症するが,未感作の場合は薬剤開始後5~14日程度で発症する。ただし,DIHSでは薬剤開始後3~6週(平均1カ月)で遅発性に発症するため,注意を要する。DIHS原因薬は比較的限られており,カルバマゼピン,ラモトリギンなどの抗痙攣薬,アロプリノール,サラゾスルファピリジンなどが知られている。いずれの病型も全身管理を要するため,入院治療を原則とする。
SJS/TENではしばしば急激な経過をたどるため,発症早期からパルス療法を含むステロイドの大量投与を行い,補液・栄養管理,感染防止にも留意する。ステロイド全身投与の効果が不十分であれば,血漿交換療法や免疫グロブリン大量静注(IVIg)療法を考慮する。水疱,びらん面からの細菌感染により敗血症をきたすことがあり,熱傷に準じた処置を要する。眼病変の後遺症として視力障害や失明をきたすことがあるため,早期の眼科受診を必要とする。
DIHSでは,中等量~高用量のステロイド内服から開始し,症状の改善に応じて緩徐に減量する。経過中にしばしば皮疹や肝機能障害の再燃・遷延がみられるため,減量には慎重を要する。ステロイドパルス療法は,ウイルスへの影響やステロイド量の急激な変動に伴う免疫再構築症候群のリスクがあるため,行わない。
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