急性腎障害(AKI)の14〜26%は薬剤性だと考えられている[Awdishu L, et al. 2017]。また入院患者では腎毒性を有する薬剤への曝露によりAKI発症リスクが1.53倍に高まるとの報告もある[Cartin-Ceba R, et al. 2012]。ではどのような腎毒性薬剤が特にAKIリスクを高めるのか、この点に興味は集まる。
Kidney International Reports誌に8月14日、この点を詳細に検討した国際研究が掲載された。著者は米国・カルフォルニア大学サンディエゴ校のZaid K. Yousif氏ら。
今回Yousif氏らが解析対象としたのは、腎毒性のある薬剤に24時間以上曝露後、血性クレアチニンが倍増した入院患者314例である。南北アメリカと欧州、アジアから登録された。
平均年齢は55歳、男性が51%、白人が54%を占めた。地域別に見ると68%が米国、ついでインド(11%)、英国(10%)の順だった。
AKI発症前の推算糸球体濾過率(eGFR)は「>90mL/分/1.73m2」が最多で56%、「60-89mL/分/1.73m2」の21.3%が続いた。
これら314例はAKIが薬剤性であるか否か、腎臓専門医9名と薬剤師1名からなる委員会が判定した。
その結果、314例中271例(86%)が薬剤性AKIと判定された。ただし判定委員全員の意見が一致したのは233例(74.2%)である。Yousif氏らは「考察」で薬剤性AKI診断の難しさを指摘している。
次にAKI発症前の腎毒性薬剤使用頻度を調べると、薬剤性・非薬剤性を合わせて最も頻用されていたのが「バンコマイシン」(48.7%)だった。そして「NSAIDs」(18.2%)、「ピペラシリン・タゾバクタム」(17.8%)と続く。
ただし薬剤性AKIと非薬剤性AKI間で比較すると、薬剤性AKIで有意に使用頻度が高かったのは「バンコマイシン」(53.8 vs. 23.3%)と「NSAIDs」(21.0 vs. 0.0%)のみで、「ピペラシリン・タゾバクタム」の使用頻度に差はなかった(18.1 vs. 16.3%、P=0.99)。
逆に、非薬剤性AKIと判定された群で薬剤性AKI群に比べ、使用頻度が有意に高かったのが「セファロスポリン」(25.6 vs. 8.5%)と「ループ利尿薬」(16.3 vs. 2.2%)だった。
ただしこれら薬剤が薬剤性AKI発症リスクにもたらす影響の大きさは完全に分かっているわけではないと、Yousif氏らは記している。
本研究は、重篤有害事象国際コンソーシアム(International Serious Adverse Event Consortium:SAEC)から資金提供を受けた。