【質問者】長谷川直樹 慶應義塾大学医学部感染症学教授
【「成人肺非結核性抗酸菌症化学療法に関する見解2023改訂」に,M. abscessus species症の治療内容が初めて記載され,その治療方法を参考にすることが推奨されている】
Mycobacterium abscessus speciesは3つの亜種に分けられるため,理解が複雑になります。しかしながら,各亜種におけるマクロライド(クラリスロマイシン)の感受性は異なることがあるため,治療の際の薬剤選択は,基本的にこのマクロライド感受性に基づいて行われることが推奨されています。感受性検査には,ブロスミックRGM®のようなCLSI推奨手法が用いられます。
亜種や遺伝子型と感受性の関係については,耐性を示す菌は,主にMycobacterium abscessus subsp. abscessus(以下,M. abscessus)のerm遺伝子(耐性誘導遺伝子)の活性化や,23S rRNA(rrl遺伝子:獲得耐性)の変異が原因とされています。このrrl遺伝子変異は,M. abscessusとMycobacterium abscessus subsp. massiliense(以下,M. massiliense)の両方で観察されうるものです。一方,感受性を持つ菌は,M. massilienseにおけるerm遺伝子の欠失や,M. abscessusの点変異C28 sequevar(T28C)の存在と関連していると理解されています。
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