結膜弛緩症は,加齢に伴って眼球結膜の弛緩が増強し,本来の眼球表面積に比較して余剰となった結膜が下眼瞼縁に沿ってあふれる疾患である。程度が強い場合には余剰結膜が角膜まで乗り上げるため,瞬目時の結膜同士の摩擦や弛緩した角膜との接触により,異物感を主とする多彩な自覚症状を呈する。高齢者ほど多く認められる疾患であり,無症状の患者も多い。
結膜弛緩の全体像を把握するためには,通常のスリット光よりもフルオレセイン染色後にブルーフィルターで観察すると,容易に診察できる。自覚症状の有無や強さで点眼療法や手術療法の必要性を判断する。
初見で結膜弛緩が軽度にみえても,患者に強く閉瞼してもらうことで下結膜囊内に隠れていた弛緩結膜が表に出てきて,本来の重症度を正確に判定することができる。眼瞼結膜と球結膜の慢性的な摩擦が継続することにより,結膜上皮障害を認めるため,フルオレセイン染色で上皮障害の位置と程度を把握することが重要である。また,フルオレセイン染色で判別が難しい場合には,リサミングリーンで染色すると検出しやすい。
弛緩結膜が鼻側で多い症例では,涙点が塞がれることにより,余剰涙液の流れが悪くなり,間欠性の流涙をきたすことがある。
結膜弛緩症では余剰結膜がたわむことで,弛緩結膜内の血管が破綻し,結膜下出血を起こすことがある。特に鼻側や耳側の弛緩症が強い場合には,結膜下出血を繰り返すことが多い。
また,結膜弛緩症と関わりが強い疾患としてドライアイが挙げられる。涙液が貯留すべき眼瞼縁と球結膜で形成される隙間があり,この隙間に涙液が貯留することで涙液メニスカス(tear meniscus)が形成される。しかし,余剰結膜がこの隙間を埋めてしまうと,貯留涙液量が維持できず,また,瞬目時に眼表面への適切な涙液進展も行われないため,角膜上皮障害を伴うドライアイ所見が確認されることも多い。
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