わが国では4%前後の発症率で推移を続ける妊娠高血圧症候群だが、降圧治療下でも妊娠20週目以降およそ4分の1が診察室血圧のみ良好な「仮面高血圧」であり、これら「仮面高血圧」群では「妊娠高血圧腎症/子癇」リスクが、診察室血圧もコントロールされていない「血圧管理不良」群と同等であると明らかになった。アルゼンチン・国立ラプラタ大学のMartin R. Salazar氏らが10月2日、Hypertension Research誌で報告した。抄録を元に紹介したい。
解析対象となったのは、アルゼンチン在住で、妊娠20週前に降圧治療を開始していた連続登録149例中、妊娠20週後の血圧を診察室血圧測定と24時間自由行動下血圧測定で評価した124例である。
平均年齢は33歳だった。
これら124例を「診察室血圧」目標値(<140/90mmHg)達成の有無、「24時間血圧」目標値(<130/80mmHg)達成の有無で分け、いずれも達成できていた「血圧管理良好」群、診察室血圧のみ目標を達成していた「仮面高血圧」群、診察室血圧のみ管理不良だった「白衣高血圧」群、いずれも目標値に達していなかった「血圧管理不良」群の4群間で、「妊娠高血圧腎症/子癇」リスクを比較した。
まず血圧管理別の内訳は、「血圧管理良好」群が54%で最多、次いで「仮面高血圧」群の24%、さらに「血圧管理不良」群の14%、「白衣高血圧」群の8%の順だった。
次に「妊娠高血圧腎症/子癇」リスクは、「血圧管理良好」群に比べ「血圧管理不良」群ではオッズ比(OR)が3.69(95%信頼区間[CI]:1.19-11.45)の有意高値となり、「仮面高血圧」群でも同等レベルの有意高値だった(OR:3.38、95%CI:1.30-11.45)。一方、診察室血圧だけが高い「白衣高血圧」では有意差を認めなかった(1.56、0.36-6.70)。
この結果は、諸因子を補正後も同様だった。
また診察室外血圧では「夜間血圧」高値のみが「妊娠高血圧腎症/子癇」リスクと有意に相関していた。