わが国でも頻用されているストロングスタチンのロスバスタチン(ロスバ)とアトルバスタチン(アトルバ)を東アジア人の冠動脈疾患2次予防に用いると、アテローム動脈硬化性イベント抑制には差がないものの、安全性では若干、アトルバが優れる可能性が示された。「Fire and Forget」と「Treat to Target」という2つのスタチン治療戦略を比較したランダム化比較試験(RCT)"LODESTAR"[ACC報告拙稿]の、事前設定追加解析により明らかになった。韓国・延世大学校のYong-Joon Lee氏らが10月18日、British Medical Journal誌で報告した。
LODESTAR試験に参加したのは韓国在住で、LDL-C低下のためスタチンが必要と判断された冠動脈疾患4400例である。12施設から登録された。
平均年齢は65歳、女性は3割弱だった。
冠血行再建術を受けたのは65%弱、およそ85%が試験導入前からスタチンを服用し、10%強はエゼチミブも併用していた。
これら4400例を試験前スタチン中止の上ロスバ群とアトルバ群にランダム化し、非盲検下で3年間(中央値)観察した。
いずれの群もスタチンの服用方法は、同試験本体で比較された「LDL-C目標達成用量変更」と「定用量」という2通りが存在した。
すなわち「用量変更」群では「LDL-C<70mg/dL」となるようスタチンの用量を調整、「定用量」群ではLDL-C値の高低にかかわらず「ロスバスタチン40mg/日」あるいは「アトルバスタチン20mg/日」を服用するというものである。
3年間観察の結果、期間を通したLDL-C値はロスバ群で3.8mg/dLの有意低値となったが、本試験の1次評価項目である「死亡・心筋梗塞・脳卒中・冠血行再建術」の発生率に群間差はなく、ロスバ群ではハザード比(HR)が1.06(95%信頼区間:0.86-1.30)の増加傾向を示した。
両群の発生率曲線は観察期間を通じて、ほぼ重なり合ったままだった。
一方、2次評価項目の1つである「糖尿病発症」(「空腹時血糖値≧140mg/dL」または「血糖降下薬開始」)の発生率は、ロスバ群で9.5%となり、アトルバ群の7.7%に比べ有意に高値となっていた。NNH(Number Needed to Harm)を算出すると「46」となる。
同様に2次評価項目である「白内障手術」も発生リスクはロスバ群で有意に高く(HR:1.66)、NNHは「100」だった。
ロスバ群で有意なLDL-C低値が達成されながらアテローム動脈硬化性イベントのリスクに差がなかったのは、群間差が十分に大きくなかったためだとLee氏らは考察し、ロスバ群でリスク上昇傾向が認められた一因として、ロスバの「水溶性」に対してアトルバの「脂溶性」という違いを挙げている。
またロスバ群における白内障手術リスク増加については、強力なLDL-C低下による水晶体内上皮細胞分化抑制が原因だった可能性を指摘していた。
本研究はSamjin PharmaceuticalとChong Kun Dang Pharmaceutical両社から資金提供を受けた。