心血管系(CV)疾患高リスク例のCVイベント発症には「LDL-C」以上に「炎症」の寄与が大きい可能性が、スタチン非服用例で示された。ランダム化比較試験(RCT)"CLEAR Outcomes"後付解析として米国・ハーバード大学のPaul M Ridker氏らが11月6日、米国心臓協会(AHA)の旗艦誌"Circulation"で報告した。同試験はLDL-C低下薬ベンペド酸のCV転帰改善作用を、プラセボと比較したものである。
アテローム性動脈硬化の成因として「炎症」が提唱されたのは1999年だったが[Ross R. 1999]、抗炎症治療による病態進展抑制の臨床的確認は、本論文の筆頭著者であるRidker氏らによる2017年のCANTOS試験報告まで待たねばならなかった。
対象は、CV高リスクで「LDL>100mg/dL」にもかかわらずスタチンに忍容できなった1万3970例である。世界32カ国から登録された(ベンペド酸群とプラセボ群にランダム化)。
69.9%はCV疾患2次予防、残りがCV高リスク1次予防例である。
平均年齢は65.5歳、平均BMIは29.9kg/m2だった。
これら1万3970例における40.6カ月間(中央値)における「CV死亡・心筋梗塞/管血行再建術・脳卒中」(CVイベント)の発生リスクと、試験開始時「LDL-C値」(中央値134.5mg/dL)、「hsCRP値」(中央値2.30mg/L)それぞれとの相関を検討した。
リスク評価に当たっては、CVイベントに影響するであろう背景因子を補正した。
1)「LDL-C値」「hsCRP値」とも四分位群が上がるに従い、CVイベントリスクは増加した。ただし上昇に伴う増加幅は「hsCRP値」のほうが大きい傾向を認めた。
すなわち「最低」四分位群に対する「最高」群におけるCVイベントのハザード比(HR)は「LDL-C値」なら「1.19」(95%信頼区間[CI]:1.04-1.37)だったのに対し、「hsCRP値」の場合「1.43」(同:1.24-1.65)だった。
「CV死亡」で比較しても同様だった(HR:0.90[NS]vs. 2.00[95%CI:1.53-2.61])。
2)同様に「LDL-C値」「hsCRP値」の高低(中央値[前出]上下)で4群に分けると、「hsCRP低値」であれば「LDL-C高値」であってもCVイベントHRは「LDL-C低値」群と有意差はなかったが、「LDL-C低値」群でも「hsCRP高値」であれば「hsCRP低値」群に比べCVイベントリスクは有意に上昇していた(HR:1.17、95%CI:1.02-1.35)。
なお、ベンペド酸によるCVイベント抑制作用は、「LDL-C値」「hsCRP値」の高低に影響を受けていなかった。
CLEAR Outcomes試験はEsperion Therapeutics(ベンペド酸製造販売会社)から資金提供を受けて実施された。