No.5197 (2023年12月02日発行) P.49
上野博司 (京都府立医科大学麻酔科学教室准教授)
小杉寿文 (佐賀県医療センター好生館緩和ケア科部長)
登録日: 2023-12-01
最終更新日: 2023-11-28
【質問者】
上野博司 京都府立医科大学麻酔科学教室准教授
【十分量の鎮痛薬に効果がない場合や,効果があっても早期に行うことで生活の質が向上する場合に神経ブロックを施行する】
がん疼痛治療の原則は,WHO方式がん疼痛治療法です。2018年に改訂され,非オピオイド鎮痛薬のNSAIDsまたはアセトアミノフェンに,オピオイド鎮痛薬を最初から併用してもよいというプロトコールになりました。
WHOは,世界中どこでも簡便で自己調節が可能な経口による鎮痛薬を推奨してきました。しかし,神経ブロックや放射線によるがん疼痛治療は非常に有効であり,選択肢のひとつとして,がんのどの段階でも常に提案されるべきものです。骨転移や軟部組織への転移や浸潤による疼痛,神経浸潤による疼痛や神経障害などの際には,まず放射線治療専門医に相談すべきです。症状緩和だけではなく機能温存や止血効果などの効果が期待できる場合があります。
患者や家族から放射線治療の希望はほとんどありませんので,主治医が放射線治療医に相談しなければ,そこで可能性が絶たれてしまいます。そのため,主治医の判断力が重要です。同様に,神経ブロックでオピオイドの副作用を軽減しつつ,確実な鎮痛効果が得られる可能性があります。十分量のオピオイド鎮痛薬や鎮痛補助薬の効果がない場合や,効果があっても早期に行うことで生活の質が向上する場合に施行されるべきです。
残り552文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する