「アルブミン尿陽性」CKD例のみを対象としたランダム化比較試験(RCT)では、プラセボを上回る有意な腎保護作用が確認されているSGLT2阻害薬だが(CREDENCE、DAPA-CKD)、アルブミン尿陰性例まで含んだ集団ではその腎保護作用に疑問符がついた。わが国の心不全合併2型糖尿病(DM)患者を対象としたRCT“DAPPER"の結果、明らかになった。国立循環器病研究センターの吉原史樹氏らが11月27日、LancetグループのeClinicalMedicine誌で報告した。
DAPPER試験に登録されたのは、血糖管理不良2型DMを合併した症候性心不全294例。ただし推算糸球体濾過率(eGFR)「<45mL/分/1.73m2」例やインスリン使用例は除外されている。
わが国18施設で登録された。平均年齢は72.1歳、男性が71%を占めた。HbA1c平均値は6.9%だった。
本試験の1次評価項目である「尿中アルブミン/クレアチニン比」(UACR)が試験開始時に明らかだったのは、SGLT2阻害薬群、対照群とも96%で、UACR中央値はおよそ25mg/gだった。またeGFR平均値は、65.7mL/分/1.73m2だった。
これら294例はSGLT2阻害薬群とそれ以外の血糖降下薬(対照)群にランダム化され、非盲検下で2年間、観察された(イベント判定者は盲検)。
(1)UACR
その結果、1次評価項目である2年後のUACRは、SGLT2阻害薬群、対照群とも試験開始時からの低下は認めず、また増加幅も群間に有意差はなかった(増加幅中央値:SGLT2阻害薬群=3.7mg/g、対照群=6.9mg/g、P=0.78)。UACRを高低で3群に分けたカテゴリー分布の改善も、両群間に有意差はなかった。
(2)eGFR
同様に2年間のeGFR低下幅(2次評価項目の1つ)も、両群間に有意差はなかった(SGLT2阻害薬群=-2.7mL/分/1.73m2、対照群=-3.2mL/分/1.73m2、P=0.69)。
(3)安全性
重篤有害事象の発生率は、SGLT2阻害薬群17.8%、対照群29.0%だった(検定なし)。
SGLT2阻害薬による腎保護作用が認められた先行RCTに比べ、本試験ではUACR平均値が低かった。吉原氏らはそれが本研究で腎保護作用が認められなかった一因である可能性を指摘している。
本研究はAstraZeneca KKとOno Pharmaceutical Co. Ltd.から資金提供を受けた。