山形県酒田市病院機構は地域医療連携推進法人日本海HCN(health care net)参加法人の1つである不妊治療専門クリニックと本年4月に事業統合について合意した。
2025年4月に統合不妊治療施設を、日本海総合病院の現在の休床病棟スペースを活用してオープンする工程で施設整備の準備に入っている。これと並行して、出産後の母親の心身ケアのための「産後ケア」施設の運営に日本海HCNとして関われないか考えている。
酒田市はこれまで宿泊型産後ケア、骨盤ケア教室、訪問型産前産後ケア等の事業を予算化して自治体としての支援事業を行ってきたが、潜在的需要が最も高いと思われる宿泊型産後ケアについては市内の産科クリニックと日本海総合病院が事業を受託してきた。
しかしながらこの数年の利用者数は少なく、利用料金も国、自治体の補助を加えても、一般的な新生児を抱えて働かざるをえない女性の立場からすると決して低いものではない。現行の負担額は今後国の支援策充実が見込まれるものの、運営する側の人材確保の難しさなどもあり、具体的な計画立案はこれからとなる。地域医療連携推進法人事業とすることに馴染むかどうか、あるいは適切な関わり方などについても参加法人間での意見交換をしてみたいと考えている。
一方、歯止めがかからない少子化は、今や国の存亡に関わる最重要課題となっている。
最近公表された厚労省発表の人口動態統計によると、2023年1〜6月の出生数は前年同期比3.6%減、2年連続40万人割れの37万1052人という。婚姻数は24万6332組で7.3%減った。2018年同期のおよそ30万組から18%減とのことだ。日本では婚姻関係にある夫婦が出生数全体の98%程度を占めるので、出生減は今後もさらに進む可能性がきわめて高い。2023年上期の減少率が下期も継続すれば通年でおよそ77万人、10年前の106万人から27%減るという(国立社会保障・人口問題研究所推計)。
婚姻数が増えず、出生数の反転もなければ、出生数が70万人を下回るのは2026年となり、これまで2043年とされていた一般推計より17年早くなる計算で、今や少子化問題は残り時間がほとんどない非常事態と言える。
酒田市は女性応援ポータルサイトに「日本一女性が働きやすいまちを目指して〜」を掲げている。日本海HCNがめざす産後ケアも、少子化に対する強力な地域インフラの1つとして新しい役割を果たせる日を夢想しているところである。
栗谷義樹(地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネット代表理事)[地域医療連携推進法人]