【質問者】林 祐太郎 名古屋市立大学大学院医学研究科 小児泌尿器科学分野教授
【停留精巣の手術は,現時点では1歳前後から2歳頃までが妥当な時期と考えられる】
(1)将来の精巣機能・妊孕性の観点では早いほどよい可能性は示唆されていますが,手術・麻酔合併症のリスクや長期的成績が明確でない現時点では,1歳前後から2歳頃までが妥当な時期と考えられます。
停留精巣は生下時から確認される病態で,新生児期には4.1~6.9%に認められますが,1歳時には1.0~1.7%に減少することが報告されています。生後3カ月までは自然改善が認められ,低出生時体重児でも6カ月程度までは自然改善が認められるため,これより早期の手術治療は勧められません。海外のガイドラインでも,6カ月以上の年齢で精巣固定術を行うことが推奨されています。
1歳未満で手術した症例では,術後精巣サイズが有意に大きくなったとの報告がある一方,1歳未満と1歳代に手術した場合は,青年期以降の精巣サイズに差がみられないとも報告されています。組織所見・思春期以降の精液所見では,1歳未満で手術した症例が有意に有効で,手術時年齢と精液所見は逆相関することも報告され,3歳時に手術した群では生検組織所見が不良であるとの報告があり,精巣機能・妊孕性の観点では,年齢は早いほうがよいことが示唆されています。
精巣の悪性化の観点では,10歳未満であれば頻度に差がないと報告され,10歳前に手術を終えていれば問題ありません。
これらの点から早期の手術が推奨されていますが,手術年齢が低いほど手術・麻酔管理の難易度は上がり,手術合併症としての精巣萎縮の頻度は1歳未満が最も高いことが報告されており,この点を考慮すると1歳前後から2歳代までに手術を行うことが勧められます。
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