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【文献 pick up】肝障害のない日本人2型糖尿病例に対するSGLT2阻害薬とDPP-4阻害薬の肝保護作用比較―実臨床データ/DOM誌

宇津貴史 (医学レポーター)

登録日: 2023-12-19

最終更新日: 2023-12-19

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2型糖尿病と非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は、「双方にとってお互いが増悪因子」という関係にある。そのため2型糖尿病治療における肝保護作用が気になるところだが、血糖降下薬間で差がある可能性が示された。佐賀大学教授の高橋宏和氏らが、わが国の実臨床データベース解析の結果として12月12日、Diabetes Obesity and Metabolism誌で報告した。日本人を対象とした解析としては最大規模かつ最長期間の観察だという。

【対象】

解析対象となったのは日本在住で、糖尿病と診断後にSGLT2阻害薬かDPP-4阻害薬を開始した8577例中、傾向スコアでマッチできた4018例である(SGLT2阻害薬群:955例、DPP-4阻害薬群:3063例)。診療/健診情報を収集する民間データバンクから抽出した。薬剤服用期間が1年未満の例、また1型糖尿病と妊娠糖尿病、さらに肝障害/疾患例は除外されている。

平均年齢は両群とも60歳強、およそ35%を女性が占めた。併用血糖降下薬最多はビグアナイド系で、併用率は両群ともおよそ3割だった。また両群とも約25%が脂質低下薬、65%が降圧薬を服用していた。

【方法】

これら4018例を対象に、SGLT2阻害薬/DPP-4阻害薬の処方を開始してから1年後の肝機能指標や肝線維化の変化を比較した。

【結果】

1次評価項目である「試験開始後1年間のALT低下幅」は、SGLT2阻害薬群でDPP-4阻害薬群に比べ有意に大きかった(群間差:3.35IUL)。また服薬開始後にALTカテゴリが「増悪」した例の割合は、SGLT2阻害薬群6.3%DPP-4阻害薬群8.5%だった(検定なし)。GGT低下幅も、SGLT2阻害薬群で有意に大きかった(群間差:5.40IUL)。同様に血中アルブミンの増加幅も、SGLT2阻害薬群で有意に大きかった(群間差:0.06gdL)。

さらに肝線維化改善もSGLT2阻害薬群のほうが良好だった。Fib-4インデックス改善幅はDPP-4阻害薬群に比べ0.22、有意に大きかった。またFib-4インデックス・カテゴリが服用開始後に「増悪」した例の割合は、SGLT2阻害薬群9.6%DPP-4阻害薬群12.6%だった(検定なし)。

なおHbA1c低下幅には両群間で有意差はない。

【考察】

SGLT2阻害薬群とDPP-4阻害薬群の間で肝保護作用が異なった機序として高橋氏らは、血糖降下とは独立した別作用の存在もあり得ると考えている。上記知見を確認するランダム化試験の実施が待たれる。

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