米国でも2017年ガイドラインで測定が推奨されるようになった家庭血圧だが、同国では上腕測定型家庭血圧計に限っても2割以上は測定値の正確性に問題があることが明らかになった。米国・ハーバード大学のStephen P Juraschek氏らが昨年12月27日、American Journal of Hypertension誌で報告した。
わが国の高血圧ガイドライン(高血圧治療ガイドライン2019)は「診察室血圧と家庭血圧の間に診断の差がある場合、家庭血圧による診断を優先する」と推奨している。
今回解析対象となったのは、家庭血圧計152台。米国の単一内科クリニックで加療中の高血圧患者が使用していた(自前または貸与)。上腕測定型以外の血圧計、またカフサイズが不適切だった血圧計は除外されている。患者の平均年齢は60.4歳、59%が女性だった。
これら152台(家庭デバイス)による血圧測定の正確性を、オムロン社製HEM-907XL血圧計(診察室デバイス)を対照として比較した。血圧測定は、背もたれのある座位にて5分間安静後に実施された。
比較方法は米国医師会と米国心臓協会(AHA)が推奨する自己測定血圧計較正テスト法に従った(本較正法の信頼性についてはEguchi K, et al. 2012)。すなわち同一腕の収縮期血圧を、患者デバイスと診察室デバイスにて順次合計5回測定する(1、2、4回目は患者デバイスを用い、3、5回目に診察室デバイス)。そして患者デバイス2、4回目測定値平均と診察室デバイス3回目測定値の差が「5mmHg以下」であれば家庭デバイスは「使用可」と評価される。他方、差が「10mmHg超」ならば「要交換(使用不可)」である。また差が「6~10mmHg」のデバイスはさらに「診察室デバイス3、5回目測定平均値」と「患者デバイス4回目測定値」を比較し、その差が「10mmHg超」ならば「要交換(使用不可)」とされる。
上記検討の結果、22.4%が「要交換(使用不可)」と判定された。この比率はオムロン社製デバイスと他社デバイス間で有意差はなかった。「要交換(使用不可)」の予知因子を患者特性に求めたが、有意な因子は見つからなかった。ただしBMI「1kg/m2」上昇に伴い、家庭デバイスが「要交換(使用不可)」と評価されるオッズ比は1.07(95%CI:0.99-1.15)の増加傾向を認めた。
わが国の高血圧ガイドラインは「カフ・オシロメトリック法による上腕家庭血圧測定計の精度は、わが国の製造会社の装置であれば大きな問題はない」とする一方、「すべての血圧測定において、血圧計の定期的な点検、および耐用年数・測定回数を考慮した使用が必要である」とも記している。
Juraschek氏はNIH/NHLBIとBeth Israel Deaconess Medical Centerから資金提供を受けた。