腎盂・尿管癌は全尿路腫瘍の5~10%程度の比較的稀な癌である。しかしながら,診断時に約75%は浸潤癌であるとされ,予後は決してよくない。また腎盂・尿管癌は,常染色体顕性遺伝(優性遺伝)疾患であるリンチ症候群の関連癌である。薬物治療においては,単独のエビデンスに乏しく,多くは同じ尿路上皮癌である膀胱癌に準じて行われる。
最も多い症状は血尿であり,顕微鏡的血尿も加えると腎盂・尿管癌の70~80%に伴っているとされる。
有用な血清腫瘍マーカーは存在しない。尿細胞診検査が有用であるが,自然尿細胞診の検出率は膀胱癌に比して低く,尿管カテーテルを用いて腎盂・尿管尿を採取する選択的上部尿細胞診採取が行われる。
最も検出能が高い画像検査はCT urographyであり,正診率は94.2~99.6%である。
画像検査,尿細胞診検査にて診断が不十分な場合には,尿管鏡下腫瘍生検が検討される。
根治切除が可能な症例においては,極力手術加療を行う。わが国のガイドラインでは詳細まで言及されていないが,欧州泌尿器科学会(European Association of Urology:EAU)のガイドラインでは,「局所浸潤(cT3およびリンパ節転移陽性症例)においては開放手術が推奨」と明記されている。
腎盂・尿管癌のみを対象として術後補助化学療法の有効性を検討したPOUT試験1)の結果から,術後補助治療としてのプラチナベースの抗癌化学療法の有用性が確認された。一方,ニボルマブ投与に関しては,膀胱癌をメインとした臨床研究2)の結果によるものであり,日本,EAU,米国泌尿器科学会いずれのガイドラインにおいても術前化学療法後の局所浸潤癌(ypT2-T4 or ypN+)および腎機能からプラチナベースの抗癌化学療法が施行困難な症例に関してのみ推奨とされている。
切除不能および転移を有する腎盂・尿管癌に対する全身薬物療法は,膀胱癌に準じて行われる。すなわち,まずはプラチナベースの抗癌化学療法,次に免疫チェックポイント阻害薬,そして最終ラインとして抗体薬物複合体であるエンホルツマブ ベドチンである。免疫チェックポイント阻害薬は,一次治療の抗癌化学療法の効果によって投与薬が変わる。病勢コントロールがついている場合は抗PD-L1抗体薬(アベルマブ),病勢進行を認めた場合は抗PD-1抗体薬(ペムブロリズマブ)である。
プラチナべ―スの抗癌化学療法に関しては,その有効性から可能な限りシスプラチンを使用するが,腎機能等でシスプラチン投与が不適応な場合はカルボプラチンを使用する。
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